菩薩

ニュー・カントリーの菩薩のレビュー・感想・評価

ニュー・カントリー(2000年製作の映画)
4.5
早い、荒い、だが猛烈に面白い、俺らが観たかった『グリーンブック 』はこれだろ?少なくとも俺はそうだし、スパイク・リーがやりたい事もこれだろうし、むしろスパイク・リーがやってる事がちゃっちく思えてくる。オンボロ車に箱乗りになり「スウェーデン大好き!」を叫ぶソマリア出身の少年がスウェーデンを大嫌いになるまでの一部始終、ちなみに彼の身内は全員内戦で虐殺されている。彼のお供にはイラン出身のおっさん(国に帰れば死刑、最低でも懲役20年らしい)、そこに年増の人生詰んでる元ミス・スウェーデン(ド巨乳)が加わり三角関係に、エロ要素とエンタメ要素もここで加味される。不法移民である彼らは自分達の安住の地を求めて彷徨う事になる。福祉国家と呼ばれる、はたから見れば「天国」であるかの様に見えるスウェーデン、だがその受け皿は既に許容量をこえており、難民を受け入れる側・受け入られる側双方に限界が来ているし、難民と言えども天使なんかぢゃない。地球を一つの生命体として見るガイア理論的に言えば、紛争・虐殺の発生→難民発生に至る過程はきっと人類淘汰のほんの序章に過ぎないのだろうが、世界はそんな簡単に不用品を排除出来る様には出来てないし、そもそも人間はゴミでは無い、だとしたらどうする、まるでこんまり基準で断捨離された人々は。おいおいまさかのハッピーエンドか…?なんて思わせといて、物語の締め方も個人的には納得、「幸せ」ってのは誰かの「辛い」の上に、その人自身が一本の横棒になり成立してるんだって事を改めて突き付けてくる。我々が幻想を抱く福祉国家の残酷な現実、それでも世界は「分かり合える」との夢を見続けるのだろうか。

追記:段落を分ける様に適宜挿入されるゲロのタイミングが完璧、計3回。
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