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メモリーズ・オブ・サマーのbellevoileのレビュー・感想・評価

メモリーズ・オブ・サマー(2016年製作の映画)
4.0
EUフィルムデーズ2020にて。

「幼年期の終り」は二度と振り返りたくないものだということを痛感。ピョトレックは母が女になる空気にも不貞にも気がついてしまった。無邪気な子どもでいられた時間は終わりを告げ、彼の中に消化出来ないいたたまれなさが澱のように積もっていく。

かつて母と戯れた水辺に連れて行ったのに、不良といい仲になってしまった隣家の少女に「尻軽!アバズレ!どっかに失せろ!」と浴びせた罵声は母にぶつけたかった彼の叫びだろう。
最低限の会話と暮らしの中で聞こえてくる音のみで、一切の説明を省いた83分間は、目線と行動で雄弁に語る濃密な時間だった。

本作は日本での公開時期が近く、母の行動が鍵になるポール・ダノの『ワイルドライフ』にやはりよく似てる。けれど語り口はほぼ真逆。
少年を追う映画は他にもダルデンヌ兄弟が浮かんだけれど、観察者である少年の視線をこれだけじっくり撮ったものはなかなかない気がする。
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