『変』
変な映画。思いつきの行動でギリギリの生活を送る主人公ハワード。終始どの方向に向かっていくのかわからないクライムサスペンス『アンカット・ダイヤモンド』
資本主義社会が生み出したバカキャラクター、ハワードを『50回目のファースト・キス』等のアダム・サンドラーが演じるのだが、この憎めないキャラクターがとにかく良い。
キャラクター的にも作品の性質も違うが本国アメリカでは『凪待ち』で香取慎吾さんがキャスティングされたような感覚なのだろう、何をしても憎めないし、人の良さがでるのがこのアダム・サンドラーである。
バタバタの会話劇をワンカット長回し風に演出し、宝石商の喧騒を見事に表現する等、監督のサフディ兄弟もアダム・サンドラーのコメディアンとしての使い道を心掛けている。
オープニングとエンディングの対構造が面白く原題『Uncut Jems(原石)』の意味も考えると深い味わいを残す。
結局は彼自身が原石、原動力であり金を呼ぶ男、マクガフィンとなる存在だったのだと気付く。
輝き続けた原石が一瞬で砕けてしまうようなラストに儚さはあるが八方塞がりのハワードが全てを手に入れたことにより、ハッピーエンドなんだかバッドエンドなんだか、これまた変なエンディングを迎える。
アメリカでは劇場公開されている本作。A24とNetflix配給のまさにノリにノっている作品だし、今観ておきたい一本。