豚アーニャ

ブルーアワーにぶっ飛ばすの豚アーニャのネタバレレビュー・内容・結末

ブルーアワーにぶっ飛ばす(2019年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

2023年5本目

私的殿堂入り作品の一つ

東京でやりたい仕事をしても結婚をしても精神を擦り減らしてくたびれていく毎日の中、元気になった婆ちゃんの顔を見るために大嫌いな地元に帰郷する作品

「リアル神隠しとか起きる」田舎の閉じ込められてるんじゃないかとさえ思う閉塞感。その中で生まれた家畜や骨董品の数々、どこにも行けない家族にとっての「日常」が、帰省するとカルト的な、地獄に足を付けて生きてるみたいな雰囲気にさえ思えてくる。田舎育ちの自分にとってよく見るモノは、東京の人から見たら異様に写るのかもしれない。

大人になって気付いた閉塞感ある田舎は、子供だった時の自分から見たらどこまでも広がる世界のように思えたな。
牛舎の牛を「田舎」で比喩してるのはマジで皮肉。
やさぐれた女の友達は、心の中でまだ生きてる「女の子」に縋ってる生き写しだと思ってるんだけど、婆ちゃんに会いに行く時だけ見送って、婆ちゃんに会って当時の気持ちが蘇ってる演出がグっときた。

「一生懸命生きてる。けど、なにが一生懸命なのか分からない」

老人ホームで、かつて子供だった時に聞いてたであろう童謡を歌わされるシーンは、幼児退行の老人方に楽しんでもらうとかそういう意味なのかなとは思うんだけど、はたして自分が歌わされる立場になったらどう思うんだろ。餌をただ与え続けられる牛舎のシーンを思い出してしまった。

旦那は全部知ってた。
「昨日、駅前で猫見かけたんだ」
と、カラオケで「犬のおまわりさん」を熱唱した夏帆が猫のニャンニャンを下ネタでディスるのが重なってるのは辛かったなー。
田舎から帰る時に夏帆の好みとかアレルギーとか、全部知ってると答えてる時の顔が不気味に見えた。今作で描いた田舎の不穏さに通ずるような気がした。もしそうだとしたら、ずっと一緒に生きていくだろうしずっと死にたいと思い続けるんだろうな。

劇中音楽がめちゃくちゃ良かった。

ぐちゃぐちゃな気持ちになりながら見てるのに、終わったら何故か感動してしまう不思議な映画。
豚アーニャ

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