一人旅

サタデーナイト・チャーチ 夢を歌う場所の一人旅のレビュー・感想・評価

4.0
デイモン・カーダシス監督作。

ニューヨークを舞台に、父親を亡くした孤独な青年と土曜教会で出逢った仲間達の交流を描いた人間ドラマ。

デイモン・カーダシスの長編デビュー作となるミュージカルタッチの人間ドラマの佳作で、教会でボランティア活動をしていた時の監督の実体験が物語に反映されています。

父親が亡くなり、母親と弟と暮らしているゲイの黒人青年:ユリシーズが、「土曜の夜の教会」で出逢った同じような境遇のゲイ達との交流を通じて、保守的な叔母や家族によって抑圧されてきた自己(同性愛者というアイデンティティー)を解放していくまでを描いた“黒人LGBT映画”で、近い作風のものだと『ムーンライト』(16)が挙げられます。

「サタデー・チャーチ(=土曜教会)」が主人公の心を支える唯一の居場所として描かれているのが特徴です。土曜教会は、家を追い出されたりして居場所のないLGBTの若者達等のために無料で食事が振る舞われたり、みんなで和気藹々と安心して過ごせる空間を提供することを目的に実施されるボランティア活動です。日本では、居場所のない子どものための「子ども食堂」が社会福祉法人等が行う地域における公益的取組みの代表的事例として近年流行していますが(子ども食堂を取り扱った映画もあります)、アメリカの土曜教会も趣旨としては同様の慈善活動であると言えます。

お話はオーソドックスで比較的淡々とした作風ではありますが、時々挿入されるミュージカルシークエンス(歌だけ聴かせて、ダンスを伴わないパターンが大半)がユニークな味付けとなっていますし、ブロードウェイで活躍する主演の若手俳優:ルカ・カインの繊細な演技に加えて、彼を取り巻く気のいいゲイ仲間達の個性豊かな容姿&キャラクターも魅力的であります。
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