ルサチマ

北の冠のルサチマのレビュー・感想・評価

北の冠(1991年製作の映画)
5.0
2Kレストア版

一般的に民主主義とは民主的な意思として弱者へ汚れを押し付ける思想であるだろうが、『天竜区』シリーズ同様にその民主主義に対する問題に踏み込んだ作品としてここまで過激な映画は中々見当たらない。

発掘作業の進む土地の中でトナカイの群れが走り抜けるロングショットが示す近代化と自然との拮抗に驚きを隠せない。

毎週土曜日に破壊されるダム化計画の中でカメラは爆破された後にカメラをパンさせながら巻き起こる汚れた煙を捉える。この煙の流れとは、この北の冠の地が民主的に近代化することを求められた場所であることを示すとともに、仮にこの近代化に争うことがあるとすれば、この地で生まれた汚れた煙は次なる北の冠を求め、別の地へと辿り着くことを強烈に批判している。

学生たちを連れた教師が子どもにこの自然を守るべく汚れを目の当たりにさせていく光景や、西欧に売られゆく毛皮のために檻へ閉じ込められたキツネの眼差しを決して忘れることはできない。
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