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北の冠のENDOのレビュー・感想・評価

北の冠(1991年製作の映画)
4.2
北の冠とはラップランドつまり北欧、正確にはスカンディナヴィア半島北部からコラ半島に至る地域の別称である。天然資源の採掘によって追い出されたサーミ人たちの末裔へのインタビューを淡々と映し出す。炭鉱や工場による環境破壊を描いたものだが、1930年に創業した工場によって60余年でここまで土地が荒廃するものなのかと戦慄する。一夜にして世界は変わってしまう。『大自然!』という言葉はいかにも馬鹿っぽいが湖と凍土と山が織りなす景色に口をついて出てしまう。モンシェゴルスクの入植者にニッケルの鉱山を教えた廉で同胞に処刑されてしまったサーミ人のアグリポフ一家は西欧では英雄だが、土地を汚染され禍根を残すことは間違いない。誰かの強い意志によって近代化が起こったというより静かに侵食していく感じが、有毒物質の生物濃縮のイメージと重なり不穏さを内側に生じさせる。絵的なインパクトに頼らない分それは増幅される。傑作ドキュメンタリー!自主字幕!
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