ニシ

北の冠のニシのレビュー・感想・評価

北の冠(1991年製作の映画)
4.8
「優しさ」とは何なのかについて最近よく考えているのだが、例えば日本の若い学生がアフリカの貧しい地域に行って支援をするような、他者を不幸なものと勝手な価値観で決めつけて上から目線で援助するなどという見せかけの思いやりの共産的思想をやたら美化して報道するテレビコンテンツは大嫌いで、本当の「優しさ」とは他者をある種完全に否定する残酷さを持ち合わせながら、自分を大事にして運命に身を任せ翻弄させられ不幸な結末を迎えても尚楽天的なユーモアで以って自分の人生を肯定するような、そのような業の肯定こそが「優しさ」だと感じている。北の冠にて、元は社会主義的に分業体制を敷いて自給自足の生活を送っていた民族が、資本主義化されることで男女は隔絶を余儀なくされ男は資本主義的労働に従事させられる(鉱山で天井にレール敷かれて重機が動いていく)。その男達が辿る運命として肺がんが示唆されるが、彼らはそれを決して悲観したり言い訳したりはしない。病院にはどこか晴れやかな雰囲気が流れている。そこいくと、その対比として描かれる畜生であるキツネは自分達の運命を目の前にして暴れ回り人間の目を常に気にしてビクビクしているように思う。そこに他の動物にはない人間独自の趣きを思い、地球は人間の所有物だと再確認する。
ニシ

ニシ