まくないと

バイバストのまくないとのレビュー・感想・評価

バイバスト(2018年製作の映画)
4.2
フィリピンのエンタメ系監督、エリック・マッティのバイオレンスアクション。

スラムで行われる囮捜査に投入された新人捜査官たちが、短時間に済むはずだった作戦が拗れたことで、大量の敵に囲まれ終わりの見えない死闘の泥沼に嵌っていく。

その構成はまるで、ブラックホーク・ダウンとゾンビ映画を合わせたよう。

当時のフィリピン映画の潮流として、麻薬汚染と警察腐敗があるが、マッティも先駆けて’13年に「牢獄処刑人」を撮っている。

この流れをマッティらしいエンタメ色強めで構成したのが本作。

作品の殆どを占める見事なスラムはオープンセットで、8000平方メートルの広さ。

同監督の初期作、「スパイダー・ボーイ ゴキブリンの逆襲」でもスタジオ内にスラムのセットを組むが、これの発展形だと分かる。

ここでの見せ場に、アン・カーティスの3分の長回し格闘シーンがあって、これはOKが出るまでに57回のテイクを重ねている。

アンの動きからもそんな苦労が偲ばれるよう。

スラムの空撮シーンでは1,278人の死体役のエキストラを並べた。
ここもサラッと流さず味わいたい部分。

雨や泥濘が表す重さや絶望感に満ちた渾身の一作。
作り手の情熱に応えて何度でも愛でたい。