フィリピンのエンタメ系監督、エリック・マッティのバイオレンスアクション。
スラムで行われる囮捜査に投入された新人捜査官たちが、短時間に済むはずだった作戦が拗れたことで、大量の敵に囲まれ終わりの見えない死闘の泥沼に嵌っていく。
その構成はまるで、ブラックホーク・ダウンとゾンビ映画を合わせたよう。
当時のフィリピン映画の潮流として、麻薬汚染と警察腐敗があるが、マッティも先駆けて’13年に「牢獄処刑人」を撮っている。
この流れをマッティらしいエンタメ色強めで構成したのが本作。
作品の殆どを占める見事なスラムはオープンセットで、8000平方メートルの広さ。
同監督の初期作、「スパイダー・ボーイ ゴキブリンの逆襲」でもスタジオ内にスラムのセットを組むが、これの発展形だと分かる。
ここでの見せ場に、アン・カーティスの3分の長回し格闘シーンがあって、これはOKが出るまでに57回のテイクを重ねている。
アンの動きからもそんな苦労が偲ばれるよう。
スラムの空撮シーンでは1,278人の死体役のエキストラを並べた。
ここもサラッと流さず味わいたい部分。
雨や泥濘が表す重さや絶望感に満ちた渾身の一作。
作り手の情熱に応えて何度でも愛でたい。