皿鉢小鉢てんりしんり

機動戦士ガンダム 逆襲のシャアの皿鉢小鉢てんりしんりのレビュー・感想・評価

3.7
何が何だか分からない。劇場版ファーストガンダム三部作はテレビの総集編だからわかりづらいのだと思っていたが、これを見るともう、富野由悠季という人の作家性がこうなのかもしれない。
最初から映画として作られているので、作画やアニメーションはとんでもなく向上しているが、相変わらず“物語を映像的に演出する”ことに興味がないらしく、話は台詞で進めるのが1番早いでしょ、と確信犯的にやっている。
戦場で“子ども”で居ようとするキャラは嫌いなので、クェスは非常に不愉快だったが“子ども”を命がけで説得しようとするハサウェイには胸を打たれた。その後弾みでチェーン殺してしまうのも、“物語”上は殺すことないだろ、なのだが戦場とはそういう場所かもしれないという説得力が上回る。
クライマックスの異常さは突出していて、とにかくおかしい。ニューガンダムは伊達じゃない!、と隕石を止めようとするアムロ、に他のパイロットたちが協力してくれるので、普通のエンタメならここで皆が一丸になると思うのだが、「俺に付き合うのはやめるんだ!どうせ無理なんだから」と逆の説得をするアムロ。そしてなんと皆が本当にやめる……その間シャアは、みんなの精神が集まっている→恐怖よりもむしろ安心を感じるとは→しかし地球人のそういうところがダメなんだ! と意味不明な自問自答を始める。
アムロが、人の心の温かさを守れ、みたいなことを言うと、
「その割にはクェスにお前冷たかったじゃないか」(シャア)
「僕だって機械じゃなくて人間だからそういうこともある、クェスを機械のように扱ったあんたはもっと酷いじゃないか!」(アムロ)
「あの女は鬱陶しかったから云々」(シャア)
、と地球を救うべきかどうかの議論だったはずが、めちゃくちゃみみっちい個人の言い争いになっていく。
極め付けがシャアの
「ララァを殺したお前に言われたくない!ララァは私のお母さんになってくれる女だったんだ!」
で、あまりにも唐突かつ、前後の脈絡がないマザコンカミングアウトに、アムロが戸惑っていると、隕石が地球から離れていく!、でスタッフロール。後は危機を免れた地球の風景ショットがいくつか……
何をどう思えばいいのか何も分からない奇怪な境地にだけは達している。