みーちゃん

Fukushima 50のみーちゃんのレビュー・感想・評価

Fukushima 50(2019年製作の映画)
1.0
映画として何を伝えたいのか、何を問題提起しているのか(そもそも何も問題提起していないのか)分からなかった。

本作の中でチェルノブイリに言及しているから、ドラマ"チェルノブイリ"と少しだけ比較すると、映像作品としての技量やリソース、事故からの経過年数や自国作か否かなどのハード面はさておき、決定的な違いは、前者が科学者の視点なのに対し、本作は誰の視点でもなく、作り手の目線であることだと思う。その目線が私とは合わなかった。知りたい事も描かれていなかった。

現場の皆さんに敬意を払うのは大前提として、精神論や根性論の美化に辟易する。当時はそれで乗り切ったとして、次の時代は?その提起がなされていない。

チェルノブイリでは危険な場所に行きたくないのに行かされる怖さを感じたが、本作では逆に皆んなが手を上げる(状況を作る)怖さがあった。若くない職員でも、子供が幼かったり、ひとり親だったり、介護があったり、一括りには出来ない。リーダー個人の考え方はどうでもいい。就業規則や雇用契約ではどう定められていたのだろう。あの後何か変わったのだろうか。

また、女性が意思決定に関わるポジションには就けず、総務係なのは理解する。でもそれが所長と懇意にしている安田成美だけなのか?(映画では総務こそ色んな人が存在していいのでは?とにかく、あらゆる人間の描き方が画一的過ぎる)。

いっそ風呂敷は広げず、ある一人の視点にフォーカスして、小さな範囲でもいいから、そこから見える事実や葛藤を鋭く描いた方がニュートラルに考えやすいかもしれない。でも、そもそもそんなことを考えようとしているのではなく、思考停止の映画だと分かった。