ちろる

ばるぼらのちろるのレビュー・感想・評価

ばるぼら(2019年製作の映画)
3.5
1973年から1974年に「ビッグコミック」で連載された手塚治虫の異色作の実写化。
この"ばるぼら"は、お家にもともとあったのでこのおかしな世界観は事前に折込み済み。

キャスティングを聞いて、ふむふむ・・・
多少の懸念材料もありつつ、観てみようと思ったのは、あの漫画の独特の世界観がどこまで映像で再現できてるのだろうという興味から。

新宿の雑踏の中、【都会の排泄物】のようなはホームレスの女ばるぼらを拾った作家の美倉洋介。
口が悪く、酒飲みで、不潔な女だが、彼女の言葉にはどこか真実がある。
そう感じてばるぼらにのめり込む美倉。
いつのまにやら、洋介にとってばるぼらはミューズとなっていたのだ。

クリエーターにとって、ミューズは多くの場合必要なものである。
なくても成立するが、ひとたびそのミューズと出逢ったのならばもう、それはなくてはならない存在となる。
作家にとって虜になれる存在があれば、そこに狂気が生まれて、作品に美が生まれる。

ばるぼらに魅せられ、奇妙な世界へ堕ちていく洋介。

ばるぼらの存在が初めこそ、救世主のような存在感だったのに、だんだんとばるぼらもマネキンのようになり、洋介が闇落ちしていく様子が恐ろしい。
後半は若干ホラーのような描写もある。

二階堂ふみの見事な脱ぎっぷりは良かったが、それでも個人的にミスキャストは否めない。
ばるぼらは・・・そうじゃないんだよばるぼらは。
スタイルは申し分ないが、健康的すぎる丸顔に、ばるぼらを「演じている」にとどまってしまった演技。
個人的には、門脇麦さんあたりのほうが観てみたかったなというのが、原作読んだ私の印象。
稲垣吾郎さんの洋介は見た目としては悪くなかったものの、長谷川博己さん永山瑛太さんあたりの憑依系役者だとどんなんだったのか?想像したくなる。

そんな感じで、どう仕上げてもキャスティングから、色々言われてしまいそうな非常に危険な本作。
ご子息がメガホンを取るということでなければなかなか難しかった案件なのでは?と推測した。
2世であるが映画業界に足を踏み入れた手塚眞監督、個人的には90年代あたりの実験的な作品が嫌いじゃなかったので、これからももっといろんななカルト系で楽しませて欲しい。
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