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地獄のmitakosamaのレビュー・感想・評価

地獄(1960年製作の映画)
4.2
大好き!中川信夫の地獄!もうほんとに地獄画図。
世間的には変な映画と捉われがちだけど、芯のしっかりした映画だと思うけどなぁ。
初見は確かシネパトスかキネカ大森。

物語は二部構成で、前半が現世の地獄。後半が文字通りあの世での地獄。
主人公の大学生・四郎(天知茂)は大学教授の娘と婚約してる。
同級生の田村と運転中にヤクザを轢き、そのまま轢き逃げをしたため、ヤクザの母と女からつきまとわれることになる。
婚約者も事故で死去。
危篤の母に会いに故郷の老人ホームへ。父は愛人を囲い、ホームの所長は暴利を貪る。みんな悪い。
ヤクザ遺族に田村に大学教授夫婦もやってきて、主人公が追い詰められる。

なんといっても田村だよな。
いわゆるメフィストフェレス役。とにかくこいつかエキセントリックで、いちいち四郎に悪徳を説く。
優柔不断で良心の呵責に耐えられずにいる四郎に、もう呪いの言葉を吐き続ける。コレが本当に悪魔的なんだ。

結果として四郎はヤクザの情婦を崖から突き落としちゃう。田村も崖から突き落としちゃう。
老人ホームでは食中毒でみんな死ぬ。従業員ら悪人はヤクザの母が毒を盛り一緒に死ぬ。
四郎も死ぬ。
ココで崖から突き落とした田村が真っ白い顔で一瞬映る。ただ生きてたのか?幽霊なのか?悪魔なのか?一切説明もなく超コワイ。

でも食中毒のクダリはあまりの展開に、つい笑ってしまう。「ヒデェ笑」ってなる。


登場人物が全員死んで、そして2部。
八大地獄に突き落とされてあらゆる責め苦を味合わされる。
ベロを抜かれ、歯を叩き折られ、針の山を登らられ、身体を刻まれ、水を奪われ。

四郎も地獄で苦しむが、亡き婚約者のお腹には子供がいたことがわかる。
その水子となった赤ん坊を追いかける四郎。
水子を救うことが罪滅ぼしになるかの様に四郎は永遠と追い続けるが、それ自体が地獄の責め苦にも見える。

ゲーテのファウストやダンテの神曲を仏教的解釈て作ったと言われる怪作。見るべき邦画の1本。
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