幕のリア

地獄の幕のリアのレビュー・感想・評価

地獄(1960年製作の映画)
4.6
全員地獄。

昔馴染みのバーで流されていた本作。
流石に全編見ることはなかったが強烈なヴィジュアルが脳裏に焼き付いた。
数年を経てようやく全編通し鑑賞。

後期新東宝と言えばエログロ路線で有名だったらしい。
この時既にベテランであった中川信夫監督は怪談映画で名を馳せる。

2部構成の前半が存外に味わい深い。
学生服を着た天知茂の違和感がえげつないが、当時29歳で大学生役とあれば無理な設定でもない。
天知茂がよくこんな役をとも思うが、そもそも新東宝スターレットとして(同期に高島忠夫!)ブレイクする筈が鳴かず飛ばず。
中川信夫監督作品での抜擢によりようやく評価され始めた時の作品のようだから気合十分。
かの澁澤龍彦も本作の天知茂を絶賛してたんですと。

後半は、怒涛の地獄絵巻。
前半でため込んだ人間模様と業、そして予算を一気にスパーク!
仏典の地獄とダンテの神曲をミックスした極彩色のライティングによる世界観に魅了される。

また、全編通して時折現れる俯瞰ショットが素晴らしい!

プロットの差別化の果てに、今やカルト映画と呼ばれる事になった本作に代表されるような作品群。
悪趣味なエログロ物などと嘲笑ってはいけない。
昨今の志の低いホラー映画やイヤミス映画と同列に並べてはいけない。
映画人による挑戦の詰まった快作。

予告編はこちら。
地獄の扉を開けてみては如何⁇

https://m.youtube.com/watch?v=MjUdZNkKFgU
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