ノラネコの呑んで観るシネマ

オオカミの家のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

オオカミの家(2018年製作の映画)
4.5
これはものすごい未見性。
孤立したコロニーから逃げ出した少女は、二頭の子豚と共に森の家に隠れるが、外にはオオカミが追ってくる。
エマ・ワトソン主演の「コロニア」のモデルともなったチリの狂信的カルト、コロニア・ディグニダをモチーフとした風刺劇。
映画全体が「過去に教団が作った教化のための映画を修復した」と言うパッケージ。
冒頭からカットを割らずに、二次元と三次元がシームレスに繋がり、抽象的な超常現象のホラーイメージが延々と続く。
無理矢理クスリでも飲まされて、悪夢を見させられているような感覚。
おそろしく手間のかかった映像は、まさにイメージの津波で、どうやって撮ってるのか分からない部分も。
怒涛の映像を観ているだけでも圧倒されるのだが、これは出来ればザックリでいいので、チリの現代史とコロニア・ディグニダを予習して行った方がいい。
同時上映の「骨」も世界最初のストップモーション映画を修復したと言う設定で、少女が執り行う人間の死体を使った儀式が描かれる。
儀式で登場するのが19世紀の政治家ディエゴ・ポルタレスとピノチェト政権のイデオローグだったハイメ・グスマン。
チリ政治史の暗部とも言える二人を呼び出すのだから、「骨」の意味するところは明らかだ。
二本ともフェイク映画の修復版という共通パッケージで、シュヴァンクマイエル的手法を駆使し政治と宗教のもたらす恐怖をホラーとして描く。
唯一無二の作家性だ。
ブログ記事:
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