不在

オオカミの家の不在のレビュー・感想・評価

オオカミの家(2018年製作の映画)
3.8
コロニア・ディグニダという実在したカルト集団から脱走した一人の少女について、三匹の子豚の寓話と重ねて描いた作品。
戦後にナチスの残党によって創立されたこのカルトは、まるであの強制収容所のような行いを移り住んだ土地でも繰り返していた。

マリアという名前や、処女受胎、知恵の樹や失楽園など聖書からの引用も多数見受けられる。
そして今作はカルトの創設者パウル・シェーファーを、子羊を導く羊飼い、つまりキリストとしてはっきりと描写している。
これはこの映画が、ここでの行いの正当性を示す為のプロパガンダとして撮られている設定になっているからだ。
その一方で、彼は子豚の家を壊して食べようとするオオカミとしても描かれている。
タイトルの『オオカミの家』は狼と神をかけているのだ。
このオオカミからすればマリアは聖母でも何でもなく、ただのエサでしかない。
自分を神と錯覚し、多くの子供達をまさに豚のように扱った男がこの世に実在した事に驚きを隠せない。
不在

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