故ラチェットスタンク

オオカミの家の故ラチェットスタンクのレビュー・感想・評価

オオカミの家(2018年製作の映画)
4.1
 XYZ軸にこれほどまでに囚われない映画は観たことがない。平面が立体となり立体が平面となる。平面の中に立体が顕現し、立体の中に平面が落とし込まれる。横が縦となり縦が横になる。壁も天井も空間を焼き付けるツールとなる。意味がわからない。加えて、人物たちも無限に身体変化を重ねる。水彩から油絵具、粘土細工からパペットまで、そのルックも自在に構成される。多くの場合、それには自壊→再生→そしてまた自壊(あるいは上塗り)のサイクルが伴い、無限に循環を重ねていく。それ自体が今作の物語、「思想の再生産(継承)」を示唆しているように思える。

 正直この内容にしては少々長いと思うが、形式の一点において見入ってしまう一作だった。微細に蠢き続ける画面と囁きのような微かな音が鳴り続ける音響が絶品。ご馳走様でした。