ツクヨミ

オオカミの家のツクヨミのレビュー・感想・評価

オオカミの家(2018年製作の映画)
4.6
創造と破壊を繰り返す、製作そのものをうまく映画の魅力に取り入れた驚異のストップモーション。
2023年話題.あのアリアスターを驚愕させたという宣伝で気になりまくりの今作を見に行ってみた。
まずオープニング、"骨"と同じくメタ仕様でコロニアという地域で製作された作品であることを記録映像を繋げた感じで啓示する。そこからはめくるめくアニメーションがスタート、手書きのペンを走らせ背景を創造したと思ったら書き殴りつつ背景がぐーっと移動し小屋のドアが開くまま入っていく主観で見せていくかなり体験的な始まりにワクワクさせられた。
そしてそこからはめくるめく動く絵画と人形のストップモーションの暴力に戦慄しまくり、"骨"以上にストーリーも無くというかわからない感じでビジュアルにずっとノックアウトさせられまくりなのだ。背景のはずの家の壁に絵が描かれだしたと思ったら絵が見る間に流れ崩れていく.床から何かがにょきにょき生えてきて人物を形作ったと思ったらぐちゃぐちゃに崩れていく.今作のアニメーションの魅力はまさに"創造と破壊の繰り返し"にあると感じた。普通のストップモーションアニメでは見せない人形の製作過程を全て見せ、それを壊す過程までじっくり描写する。レオン&コシーニャ監督が「これは映画じゃなくてワークショップみたいなものだ」と言っているのが本当だし、そんな普段は見られないものをメイキングじゃなく映画本編にガッツリ組み込みホラーとしても見られる仕様に大拍手だ。
あと本作のスタイルというか表向きは子どもに向けた注意喚起ビデオみたいな感じなんだが、ストーリー的にはやばい施設から逃げてきた少女が被る悲劇という二重のメタさがかなり評価の肝かと思う。チリで事件になった"コロニア・ディグダ"という土地で製作されたビデオという設定だが本編は土地の良さを持ち上げるというフェイクであるし、土地から逃げた本編は逃げられない悲劇になるエグさがまーメタメタしいというか。言葉による説明が全くないため多様な見方ができる作品であるのは間違いないだろう。
まあ本当にビジュアルの驚異のパワーに打ちのめされ、そんな芸術的なビジュアルがワンショットでうまく見せられたのも素晴らしい。結局はイニュリトゥの"バードマン"みたいなフェイクワンショットなんだが、ズームインをうまく活用し興味を持続させるのにうまくハマっていると思わせる。ワンショットであるが裏ではワンショット風に見せるうまい編集のオンパレードなのも評価のポイントだと思う。確かにレオン&コシーニャ監督マジで新進気鋭の才能だなーたまげた。
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