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オオカミの家のmappoのレビュー・感想・評価

オオカミの家(2018年製作の映画)
4.0
ドラッグ依存患者の描く絵で映画を作ったら…みたいな映像体験だった。
コロニアディグニダのプロパガンダ用の映像という設定だが、全くポジティブな宣伝になってない…笑

人間はいかに育った環境の価値基準に縛られてしまうか。そして、自分が支配し攻撃する側にいるとき、如何に人間は鈍感になるか、その恐ろしさ。実際コロニーの住人は被害者であり、部分的には加害者でもあった訳だが、その複雑な心理状態をよく視覚的に表現したなと。

マリアがペドロに読み聞かせていた本「家と犬」の内容が、「外は恐ろしい」という思考の刷り込みでしかなくてゾッとした。そして、コロニーがこのプロパガンダ映像を作った目的も同じなんじゃないかと思った。
マリアは被支配者であるブタを養うことや裏切りに怯えることに疲れ、最終的には自らが被支配者に戻ることを望むようになる。つまりこの物語は「お前はもう1人では生きていけないよ」というシェーファーからのメッセージを含んでいる。それを子供に道徳や教訓を伝えるための童話の形式、そして童話でよく取り入れられるストップモーションで伝えていることのおぞましさが、この映画をより一層不気味にしているように感じた。
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