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オオカミの家のumisodachiのレビュー・感想・評価

オオカミの家(2018年製作の映画)
3.7




コロニア・ディグニダをモチーフにしたアニメーション映画。短編『骨』と同時上映。

コミューンから逃げ出した少女が逃げ込む空き家。そこで2匹の子ブタと共に生活する少女だったが、自分を探す声が聞こえてきて……。

ものすごい歳月を費やしたであろう農密度の悪夢。コロニア・ディグニダについて知っていれば、それぞれの表現が何を表しているのか想像しながら見ることになるが、そう単純なメタファーになっているわけでもないので、とにかく「わけがわからない悪夢」を長時間見せ付けられている感覚に陥る。

正直、途中ちょっと眠くなるなどしてけっこうしんどい鑑賞体験となったのだが(ぶっちゃけ少し寝た)、それも含めて悪夢だと感じた。たったひとりで不気味な家に隠れて、そこでは訳が分からないことが起きて、周囲からは自分を追いつめる声が聞こえて、一緒にいる2匹の子ブタたちは次第に変化していって……って、ホッとできる瞬間がほとんどないまま進行していくのがリアル。

怖いシーンは大げさに、ホッとできたりクスっとできたりするシーンをほどよく散りばめるのがホラーのお約束だし、ホラーでなくともストーリーのメリハリがついていないと鑑賞者は飽きてしまう。でも、本作はそういう風にはできていない。ずっと現実と悪夢の境界のようなエリアで怯え続けていて、ずっと同じテンションでイヤーなプレッシャーが続くのだ。おそらく、コロニア・ディグニダのような場所にいた子どもたちも、そうだったのだはないか?と思う。

親から引き離されて安心できる空間は皆無で、常に何がが自分を脅かすかもしれない予感に苛まれ続ける感覚というのだろうか。独自の秩序を教えられているので「それが普通」「それが成功のための道」と思っていたのだとは思うが、生存本能と言うか、直感的な違和感のようなものを感じ続けていた子どももいたのではないかと想像する。実際、逃げ出してた子どもたちも存在するのだから。

そんな異常な状況であっても、そのテンションがずーっと持続すると「単調で退屈」だと(少なくとも私の脳は)感じてしまったわけで。そのことが何よりも恐ろしい。

ちなみに、同時上映の『骨』は不気味ながらも可愛い感じの作品で、ストーリーも分かりやすかったのでそちらは飽きませんでした。
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