コロニーから脱出した少女マリアが行き着いた先は、オオカミの住む家だった…。
ストーリー云々というより、演出の特異さが軸となっている作品なのは明らかであり、その気持ち悪さに驚かされるという意味でも、ホラー作品なのだと思う。
悪夢にしてもその発想は浮かばないなと思わされるような描写が続く。
悪夢じゃない時点でも、不気味に感じるのは、さまざまなものが家に溶け込んでいる演出ゆえだろう。
家の壁に浮かび上がる平面的な人間の顔。部屋を移動しているのか、それとも単に悪夢なのか、壁には次々と家具などが現れては塗りつぶされ吸収され消えていく。
平面的な動きのみならず、人形のように立体的な形状をとる場合も、ドロドロと溶けていって跡形もないまま床へと流れていく。
このように、全てのものが創造と破壊を繰り返す。この家そのものが生き物であるかのように。
家中どこへ行ってもマリアは逃れられない。彼女の心がどんどん蝕まれていくのも、この創造と破壊の繰り返しによって表されているのかもしれない。