てつこてつ

影裏のてつこてつのレビュー・感想・評価

影裏(2020年製作の映画)
3.0
テレビ岩手開局50周年記念作品。

アニバーサリーとして世に送り出すには、あまりにも暗く、クセが強すぎるこのような作品を映画化したテレビ岩手のセンスは好き。キャスティングも綾野剛を筆頭に、國村肇、筒井真理子、安田顕など渋くも味のある俳優さんを揃えている。

但し、不穏な出だしから話を煽りに煽った挙げ句に、エンディングは拍子抜け・・と言うか、何とも言えぬモヤモヤ感が残るストーリー自体が好みではない。そこに答えがないので、ミステリー作品だと思って期待すると、絶対、肩透かしを食らう。

疑問点が多く、久々にネタバレを知りたくて、ある映画ライターさんの評論に行き着いたが、その人物も解釈に難点を見出しているのが明確で、明暗のコントラストが美しい等、基本、監督のテクニックの評価に終始していた。

部屋に侵入した蛇の下りから発覚する綾野剛演じる主人公の秘密、出張で主人公を訪ねてくる東京の友人の奇抜なキャラ設定を、2時間半もある作品なんだから、もう少し分かりやすくストーリーに落とし込んで欲しかった。故に、終盤に主人公がある物を見てハラハラと涙をこぼすシーンに凄く違和感を覚えてしまった。ザクロを囓り合う、桃を渡そうとする抽象的な表現だけってのは、あまりのも乱暴過ぎ。

松田龍平演じる隠された裏の顔を持つ男の台詞も、あまりにも意味深なものが多い割には、その本性は案外アッサリとしたもの。「ザクロは人肉の味がする・・」「人の死体の上に苔は生える・・」なんて、あの顔つきで言われた日にゃあ、どんな殺人鬼なんだ??って、普通、思うじゃん?

松田龍平は役作りでそうしているのか、元々の癖なのか分からぬが、滑舌が悪く、前半は、ほぼ彼と綾野剛の二人の会話劇で話が進行するので、ボソボソと喋る重要な台詞が聞き取りにくく感じた。

但し、地方ロケ作品ならではの映像はとても美しい。幾度と登場する盛岡市郊外の渓流釣りのシーンの目に焼き付かんばかりに青々とした緑の大自然は素晴らしい。

どうでも言い事かもしれないが、個人的には、中央大学や、業種は全く違えどアイシンのような、実際に存在し、誰もが聞き覚えある学校名や企業名を映像でハッキリ見せている事に結構驚いた。普通、このような作品では、明らかにフィクションだと分からせるための名前を使用するのが通例なのだが・・
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