ひなこ

影裏のひなこのレビュー・感想・評価

影裏(2020年製作の映画)
3.4
Fan's voiceさんの試写会にて。

綾野剛さんが「楽園」で「土地から吸い上げる」役作りについて話していたが、全編盛岡ロケの本作も同様だったように思える。
転勤で慣れない土地に住む警戒感。
松田龍平と出会い解されていく安心感。
疑いと愛の狭間で揺らぐ葛藤。
そして爽やかなラスト。
表情そして仕草どれひとつとっても全く異なり、今野の人生を生きていたんだな、ということがひしひし伝わってきました。
あとひたすらに撮られ方撮り方が色っぽすぎます。いつもの綾野さんより若干筋肉落としてるのか、足が女性かと思った、、

松田龍平は掴み所がなく、謎の多い役を演じさせたら日本一だな、と。既に映画祭で助演賞を獲っているということ抜きにしても、この役における怪しさ、そして「一番黒い影」を持つ男は見事です。


中村倫也の女装は定期的に見ている気がしますが笑、今回はそれ以上に短い登場時間の中での一役者として存在感がすごい。目にいっぱいに浮かべた涙をこぼさず、自分の感情を抑えて包み込みにゆく姿が素敵でした。初見で一番印象に残ったシーンかも。

音楽が大友良英さんなのはエンドロールで一番驚いたこと。岩手の自然音や、ひとつひとつの生の生活音をメインにした作品だったので、劇伴は後半に多かった。言われてみれば重いシーンにしては軽快なリズムを刻んでいたりした曲も思い出される。

映画全体としては、私の語彙力と理解力を持ってしては良くも悪くも「文学的な」という形容の仕方しかできません。正直まぶたが重くなるシーンも少なからずあったので。芥川賞原作と聞いていたものの、「解釈」の必要な純文学の作品を久々に観てちゃんと理解するには2度3度とゆっくりと観たいと思います。

(なお今回は座席運にも恵まれず、お隣が独り言多目の方ということもあり笑)
ひなこ

ひなこ