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影裏のjamのネタバレレビュー・内容・結末

影裏(2020年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

綾野剛には、仄暗い役がほんとうに似合う
松田龍平には、本心が窺えない役が良く似合う


震災前後の盛岡を舞台に描かれる二人の男
煌く水面に映える緑のなか、並んで竿を垂れる
地酒を酌み交わし、たわいもない話をする

いつしか心を許す友となった頃、
松田龍平演ずる日浅は姿を消す
再び目の前に現れた彼は、以前とは何か違う…

そして、あの震災
沿岸で釣りをしていた日浅は行方不明になるが、
家族は捜索願を出さず…


誰しも、全てを曝け出して生きているわけではなくて
他人には知られていないこと、
知られたくないことがある
日浅のみならず、綾野剛演ずる今野にも
そして私たちにも


劇中の日浅の印象的な台詞

知った気になるなよ
お前が見たのは、ほんの一瞬光が当たったところだ
人を見る時は、その裏側
影の一番濃いところを見るんだよ

その言葉を表すように、日浅の知られざる影の部分が次第に明かされていく…


日浅が瞬きの少ない瞳で見つめる先
哀しみをたたえているのは、今野も同じ

自らをあまり語らない今野にも
公にできない影の部分が。

中村倫也の化けっぷりに少し驚いて
とても美しいハグ…
少しだけ、私自身の記憶が甦って泣きそうになる


明るい日差しが注ぐ川辺とは裏腹に
陰鬱な空気で物語が進むので
静まりかえった劇場内に私の隣の席のおばさんの鼾が響く

このまま救いは無いのか、と見つめ続けて

"死んだ"木の上に苔が生えて
そこから、新しい芽が息吹く
そうやってみんな、生きていく

大切にしてきたジャスミンの鉢植えが
震災でダメになってしまったのは切なかったけれど。
きっとまた、新しい芽が…


すっかり手際が良くなった今野の竿捌き
そばに居るのは…
jam

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