シネマスナイパーF

ブラインドスポッティングのシネマスナイパーFのレビュー・感想・評価

ブラインドスポッティング(2018年製作の映画)
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日本にはOne Gooseがいました
アメリカには彼らがいたか
超カッコいい映画


テンポがよく短い尺の中で情報量が多い
引っ越し業のお客さん方やコリンのライミングなど、多分次観た時に更に発見できる要素が多いと思う

主人公ふたりの間柄が秀逸な関係で、様々な問題提起を実現させている
一番わかりやすいものは、誰もが手に汗握ってしまうクライマックスを見れば嫌でもズシンと心に置かれてしまう問題
次点で、マイルズのような息苦しさを感じている人もいるという問題
そしてそういった複数の問題は同居するものなのに、同時に見ることができないという問題
彼らふたりの痛みを背負うことになるものが、この映画だと拳銃になっている
その拳銃がふたりのもとへ舞い込んで来ると同時に実はマイルズの抱える問題を最初から提起していたオープニングがイイね

今までで一番、映画の中での銃が恐ろしかった
中盤ある人物が手にしてしまうシーンはこっちまで吐きそうになる緊張感だった
終盤その人物とコリンが一瞬だけするやりとりが、放たれた言葉の軽さに対して重すぎる内容を持って僕たちに届く


人物描写が優れている
かなりの悪事のせいで指導監督期間中であるはずコリンが全然悪そうに見えないのは、服役そのものに対しての抵抗は無さそうだからですね
マイルズもクソ野郎に見えてファミリーガイだからギリギリ味方できる絶妙なライン
ふたりを取り巻く女性陣が彼ら以上に強い連中で魅力的なんだよな
コリンの母は言わずもがな、マイルズの奥さんの家庭ファーストな感じには逆らえない
うまい言い方が思いつかないんだけど、ヴァルの強キャラ感は映画の伝えたいテーマを一辺倒にしないバランスを確実にもたらしている
ヴァルが一番達観していて、狂いなく問題を見つめている


作る意義を持って作られるべくして作られた、スーパークールな社会派映画
アスには世界そのものに対しての価値観を根本から揺るがしに来る怖さがありましたが、今作にはそれよりも明快に、今まさに目の前にある問題をゼロ距離に突きつけてくるパワーがあった