さちこ

人間失格 太宰治と3人の女たちのさちこのネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます

画力がすごい さすが蜷川美香ワールド
どこのシーンにも必ずと言っていいほど花が絶対に映ってるなぁと
蜷川美香らしいゴテゴテ感やりすぎ感が逆にクセになる 色彩も鮮やかで柄や花で飾り立てて、正統派ではない 醜いかもしれない けどそれがかえって美しいんだって感じた

その蜷川美香の世界と太宰治の今回描かれたような退廃的な生き方が共通するところがあるのかなと
正しい生き方じゃないけどああやって命を燃やして堕ちていくのが美しいんだぜ、みたいな それに酔ってるみたいな 蜷川美香そういう節ある
渦中の人はそれに酔ってて、周りからみたら堕落したどうしようも無い人間だよね 成田凌とかはそう思ってたはず


宮沢りえもそっち側の人間かと途中まで思ってたけどとんでもなかった 夫に「壊せ」と言えるのはすごい そこに他の2人の女との違いがあるように思った

まず前提として3人の女の共通点は「太宰治に利用された」こと 妻という家庭の象徴として消費され、恋に心酔しインスピレーションをもたらす存在として利用され、自分の存在意義を確かめるための道具としてそばに置いた

ただ、沢尻エリカと二階堂ふみは、ずっと《私が》だった 「《私が》太宰と一生分の恋したい」 「《私が》太宰がいないと生きていけな」かった あくまで本人たちの願望・欲求を叶えたいがために太宰治が必要だった だから、沢尻エリカはしたかった恋をして欲しかった子どもを手に入れて別れてから『斜陽』を連名にするよう手紙を書いたしも死んでからも大宰についての本を書いた

二階堂ふみは、徹底的に尽くして依存することで「幸せ」を感じていたし、肺がぶっ壊れてセックスできるような体調じゃなくても自分の快楽のために太宰の上に跨って自分がひとりにならないために道端で死にそうだった太宰を蘇生させた

太宰も利用していたけど、2人も太宰を利用し尽くした


しかし、宮沢りえはちがう 彼の稼いできた金で生活してたとはいえ、子どもを3人も育て実の妹だっけ?の死に目にも会えず、彼の不倫にもずっと前から気づいてても目をつぶってきた 途中までただの都合の良い奥さんで終わるのか…と思ってたけど違った
太宰が好きだから都合の良い女にならざるを得ないのではなく、彼のことを愛しているから彼の作品を生むためのことだったら自分や自分が大切に守ってきた家庭が壊されることもいとわない女だった

その違いを太宰はよく分かってて、でも宮沢りえのことを愛しているから壊れないギリギリのところでやってきたんだよね けど面と向かって「壊せ」って言われたから、家庭も自分自身も全て壊して『人間失格』を書き上げた

「壊せ」と言われてから太宰は、壊れてもいいからなりふり構わなくなって二階堂ふみを家にあげて、身の回りの世話と子どもとの交流を許した

家の中がとっ散らかってるだろうと思いながら宮沢りえが家に帰ってきたら綺麗さっぱり整頓されてて子どもの一言で確信に変わった瞬間がグロすぎたな 今まで外では何やってても家の中は自分の領域だと唯一安心できる場だと思ってたところを侵食されたんだもん 他の女がきれいにした床なんて汚したくなるよね

生きてる2人はタフだね〜ほんとに 沢尻エリカは死んでも利用し続けるし、宮沢りえは太宰なんていなかったかのようにこれから生きていくんだろうな


でもやっぱり何より太宰治は女がいないと生きていけない男なんだってところがメイン 仕事は女がいないとできないし多分家事もできない でもその女たちをコントロール出来なくて押しに勝てないんだもんな

「太宰治に翻弄される女たち」の話というより「女たちに依存し振り回された太宰治」の話でした


長いこと書いたけど要するに今回描かれた太宰治は女たらしのクズです!
さちこ

さちこ