画面がむせ返るような生花の香りで満ちている。豪奢。
自分は彼の人生がどう進むか既に知っている口だったが、彼を取り巻く女性たちは文章で読んだ知識を塗り替えていく鮮烈さで映画の中で「生きて」いて、グイグイ引き込まれて飽きさせなかった。
また、チラッと名前の出てくる志賀直哉など、文壇の小話に詳しい人には面白い一場面も。特に座談会に現れる三島由紀夫などは「『来なけりゃいいじゃねえか』か『やっぱり好きなんだ』か、どっちのパターンだ……」と個人的に楽しく観ていた。
兎にも角にも三人の女性がそれぞれ魅力的。なんというか、贅を尽くした映画だと感じた。