おばけシューター

ジョジョ・ラビットのおばけシューターのレビュー・感想・評価

ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)
3.9
「ドイツ語っぽく便意を伝えたい」ってありましたよね。ベンダシタイナー。フンバルトデルト。ワーデル!ゲーベン、モーデルワ!!

こんな話から始めた自分が嫌になるくらいには、それはもう素晴らしい傑作でした、ジョジョラビット。ちなみに本作はドイツ語で無く英語です。ほんとにこの話する意味無かったな。

20年公開作品でベストに挙げる人も多くいたのも納得で、本当に悪いところが無い。
コメディ調を徹底して戦争の全てを描き切るというスタンスは同じように終始ゆるい作風で戦争の悲惨さを描いた【この世界の片隅に】を思い出すアプローチで、わざとらしさが無いぶん却って戦争の狂気が伝わってくる。それはそうと全体的にオシャレですな!

ただ、個人的に非常に気になってしまう点もある。それは「まだこの話するの?」という事です。
なにかと悪のモチーフとして取り上げられるナチスドイツですが、さすがにもういいだろ(許せとは言ってない)と思ってしまう。
ホロコーストを行った政権は日本を含め数多くあったし、なにより現在進行形で虐殺や民族浄化を行っている国があるのに、それらを無視してまで何故こればかりを蒸し返す?そして伝えたいことは普遍的なテーマで、舞台にこれを選ぶこと自体に深い意味はないこともよく見るという。
まぁぶっちゃけ、アカデミーウケがいいんでしょうね。

さておいて、役者がどの方も完璧な配役と演技!
監督自ら演じるヒトラーや母親役のスカーレットヨハンソンはもちろんですが、主役の子もめちゃくちゃよい!
デイビス少年は【ホームアローンリメイク】の主役に決まってるみたいです。楽しみですね。
エルサ役の子はキュートすぎ!最初の登場シーン、お前ノリノリじゃねーか!みたいなホラー的演出がよかった!
何より好きだったのはサムロックウェルの大尉!存在感が素晴らしいし、最後らへんのカットは本当にどれもよかった!ラストでジョジョの後方から大尉のいたあたりで銃声がするのは、【ライフイズビューティフル】のオマージュかな。だとしたら、彼は父親代わりだったのかもしれない。
その最後のカットも含めとにかく好きなカットが多く、最後の曖昧なダンスシーンとか、なんかわからないけどめちゃくちゃいいんだよねぇ。あれは物理的に外を全く知らなかったエルサと、精神的に何も知らなかったジョジョが、見よう見まねの自由を体現するカットでしょうか?

そういえば、ジョジョの奇妙な冒険の主人公たちって、タイトルの割にジョジョって呼ばれるの最初だけだよね。こんな話で締めくくる自分がどうしようもなくつまらなく感じるほどには、素敵な映画でした。

おわり