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ジョジョ・ラビットのhachiのネタバレレビュー・内容・結末

ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

すべてを経験せよ
美も恐怖も
生き続けよ
絶望が最後ではない
-詩人 リルケ-

エンドロールに出てきたこの詩が全てだった。素晴らしい。コミカルに表現される第二次世界大戦下ドイツでの出来事を主軸に、悲惨な戦争描写、陰惨な現実、一貫して紡がれる"愛"に、所々笑いながらも自然とそういうことと向き合えるような映画だった。本当に面白かった!人や社会から"違う"とされるものに対して攻撃するのではなく、話し合いながら互いの理解を深めていくことが大切なんだなぁと感じさせられる。

合宿に参加する前に自分を振るい立たせるジョジョとアドルフに笑わされた。可愛いなぁ。アドルフのコミカル部分と怒鳴り散らす演説系部分とギャップがすごかった。それにしてもヒトラーユーゲント(青少年団)で目を輝かせて訓練を受けて育った青少年達がいずれ「ヒトラーの忘れもの」のように敗戦後、地雷処理を担当するようになるのかと思うと初っ端から胸が痛い。

ジョジョやヨーキーやエルサといった子ども達も際立ったキャラだったけど、それ以上にジョジョの周りを彩る大人達が素敵で良いキャラが多くて本当に楽しかった。まず母ロージーやエルサや教官やらの女性陣が強くて笑った。
母ロージーが父親に扮する場面も彼女の覚悟や力強さが現れているようですごく好き。そして彼女の足元がすごく印象的に描かれていて、プール際や石垣でのステップが素敵だなぁと惚れ惚れと見ていたらまさかの伏線で本当トラウマ。母の足に縋り付くジョジョの姿に涙が止まらなかった…エルサを刺そうとした後に泣き崩れるジョジョと慰めるエルサ、窓際で寄り添う2人の見つめるその先が爆撃の光に照らされた夜空だっていうのがこの時代のすべてを物語っていて切ない。
女性教官、ベルリンの戦いの場面で少年隊員達に銃を持って突撃させるだけかと思いきや自身も機関銃持って戦いに飛び出したその豪胆さが好き。居合わせたジョジョに隊服を着せるのも突撃させるためではなくジョジョを味方の銃撃から守るためだったのが本当心にくる…でもやっぱり子ども達だけは突撃させないでほしかった。けど史実通りらしくこれが現実だなんて…本当悲惨。

そして母ロージー並みにMVPなキャプテン・K。
超良いキャラ。好き。めっちゃ格好良い、サム・ロックウェル。ベルリンの戦いの時は自分で考えた装備を着けて登場する子どもっぽい所とかそれを見せつける感じとかお茶目、と男らしい所のギャップよ。確かナチスでは同性愛者も迫害の対象になっていたと思うから、彼とフィンケルとの匂わせを考えると家宅捜査でエルサを庇ったのは自分の隠し通さなきゃいけない秘密と重ねて見たからなのかなぁと想像した。最期に命を懸けてジョジョを逃すその姿は号泣。

そして何よりも子ども達の懸命な姿に心震わされた。ジョジョとエルサの手紙のやりとり可愛すぎ、そして2人とも優しい子達で本当に涙する。(落語のまんじゅうこわいみたいに食べ物を運んでこさせようとするエルサ賢くて可愛かった)
親友ヨーキーが生きていたの地味に嬉しい。あいつベルリンの戦いでも銃渡されて突撃して行ったけど死なないか?と思っていたら生きていて、そのほのぼのさに見てるこっちが救われた。ロボットみたいな被り物してるジョジョと抱き合う姿はすんごく可愛かったな。

「できることをする」という言葉と、エルサの靴紐を結んであげての外は危険ってやりとり、冒頭に母とやった掛け合いそのままで今度は守る側に回っているジョジョ…母が伝えたかったことがちゃんと息子に伝わっているようで本当泣ける。
ラスト、ジョジョとエルサが笑顔で踊るシーンで終わるのが希望を見出しているようで救われた。ジョジョ最初はすっごく可愛いっていう印象だったのにこの場面では格好良くすら感じるからこの物語を通しての成長がわかって感動。色々と考えさせられる映画だった。
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