Hotさんぴん茶

ジョジョ・ラビットのHotさんぴん茶のネタバレレビュー・内容・結末

ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

結構前に見て、スマホのメモをたくさん残していたのに、アップしていなかった。長いけど、せっかくなので載せる。(実際に鑑賞したのは、調べたら2020/1/25。)

★全体的に洗練された雰囲気だった。また、考えさせられる内容だった。思ったことをつらつらと書いてみる。

■ヒトラー(ジョジョのイマジナリーフレンド)
・最初この人はめっちゃ気さくで笑えた。目もクリクリしてマスコットみたいに思えた。ダンスなんか踊っちゃって、ジョジョとは息もピッタリ。でも話が進む中でこの2人、だんだ噛み合わなくなってきて…。

・でも自分はそれを見ながらも、きっとこの友人はどっかのタイミングでジョジョに迎合してくれるのでは?と想像してた。けど違った。むしろどんどん本物のヒトラーぽく変貌していった気がする。当初はキレて、机を蹴る人じゃなかったし。

・あと最後の彼の消え方は、想像以上に勢いが良すぎて少し笑えてしまった。窓からあんな風に飛んでくとは(^-^;
これは完全にアニメの飛び方だ笑

・でもこれを書きながら思った。この空想の人物は最初から、「ジョジョがヒトラーの思想と決別するための秘密の鍵」だったのかも。最後の方にカゴのウサギを逃すイラストがあったので、うまく説明できないけどなにか関連して感じられた。そもそもうさぎの例を出してジョジョを励ましてくれたのは、ジョジョの空想ヒトラーだ。

・イマジナリーフレンドは、それを見ていた本人が成長したら決別する運命にあるらしいと聞く。その人の成長を助けてくれる存在とも言える。この空想上のヒトラーも、ジョジョの成長を担った大切な存在だったのかも。

・最初は一見この空想のヒトラーが主導になってジョジョを導き励まし、または洗脳しているように見えた。でも実は違ったのかも。

・この空想のヒトラーはジョジョが生み出したものだから、あくまでジョジョが主人。ジョジョの一部でしかない。きっとジョジョは自分がヒトラーの考えにに染まりきれないから、無意識のうちに自分とは切り分けていたのかも。(あくまでこの空想ヒトラーはジョジョにとって友人であり、「自分そのもの」ではない。)

・つまり彼は最初から洗脳されてなんかいなかったし、迷いつつもきっとヒトラーの考えと決別する道が残されていたと思えた。
(そうでなければ、空想のヒトラーなんて生まれず一気に自分がヒトラーの思考に成り代わったようになるはず。あの残酷なヒトラーユーゲントの先輩の様に。)

・あとこの想像のヒトラーは悪いことを強要しているようでいて、中途半端に踊ってたり無理強いさせず励ましてくれたりもした。ただ最後はほとんど実在のヒトラーに近づいて、あまり励ましてなどくれなかった。最後は嫌われ役として追い出された。

・この空想ヒトラーは、実際のヒトラーとは似て非なるもの。ヒトラー色濃いめだったけど、いろんな人の特徴が混じってできた人物だったんだろうな。この空想のヒトラーがダンスを踊っていたのも、ちょっと母の影響もある気がした。良くも悪くも、ジョジョが成長するのに必要な存在だったんだと思う。想像する力が彼を救ったとも言える。

■ヒトラーユーゲントの先輩
・ジョジョをラビットと呼んで虐める先輩、心を病んでる?意地悪すぎるだろ。こんな風にこの団体には今の社会にいたら、こいつヤベェ、と思われて避けられるような人がたくさん。これが戦争の恐ろしさか…。こんなのに先輩顔される世の中とか嫌すぎる。あと、この性格悪すぎる先輩の演技がうますぎる。本当に心から嫌な奴にしか見えなかった。演技者の精神が心配になるくらいに笑

■ウサギ
・ウサギを食べるために殺す国もあるけれど、このヒトラーユーゲントの先輩はただウサギを殺しただけ。殺すために殺したというひどい話。見てて気分が悪かった。普通に考えて、ウサギがこの先輩に何をしたというのか?当然何もされてない。それなのに、殺すなんて。これが表してるのはきっと、もう理念なんて関係ない。最後は殺すのが目的になってるんだということ。この団体はこうして狂ってきたのだと、強烈に伝わってくるシーンだった。おぞましいにもほどがある。

■ジョジョの母
・この役を演じたスカーレット・ヨハンソンの演技が素晴らしい。オシャレだし、心が美しい人物。靴がよく映されてたけど、まさか最後のあの悲しい結末の伏線とは…。この母の最後のシーンでオシャレな靴と、状況の悲惨さとのギャップが心にくる。

■ユダヤ人
・当時の匿われてるユダヤ人はいろんな作品で大人しくて可哀想なイメージで描かれることが多い気がしたが、この映画に出てくる女の子は違う。気が強く、けっこうすぐに手が出る笑。自然な感情を持った現代の女の子と同じだ。悲惨な状況でも自分をしっかり持った彼女には、人間味を感じてよかった。

■ドイツ軍
・見ていて雇用先がたっぷりあるんだな、と感じた。キャプテンKなんて、あんな失態をもってしてもちゃんと解雇されずにいるんだもの。戦争は雇用も大量に生み出してたんだな、と実感。こうしてみると、軍にいた人は今より食いっぱぐれなかったのかも…。(あくまで死ななければ、または心の状態を無視すればの話。)

■主人公ジョジョ
・劇中何人かが彼を醜いとか言ったが。わたしから見たら全然醜くない、傷もそんなにひどく見えない。むしろ可愛い。だから、ちょいちょい醜いという言葉が彼に使われるのに違和感を感じていた。やはり当時のドイツはアーリア人は見た目がどうのとか、見た目を気にする風潮が強めだったから自他共にそう思ってしまったのかな。(ジョジョの母は醜いとは言わなかったけど。)

・劇中にピカソみたいな顔、とかいうセリフが出ていたのも心に残った。ヒトラーユーゲントの女教官の言葉だ。これは単純にジョジョの傷の酷さ、見た目も表してたんだろうけど、それだけの意味じゃなさそう。ピカソはヒトラーに弾圧された側の芸術家。単に怪我をしただけじゃなくて、彼の周りの人たちの目が、薄っすら変わってしまったのだろうか?

いろいろ考えさせられて、良い映画体験だった。