MasaichiYaguchi

MemoriesのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

Memories(2019年製作の映画)
3.0
今関あきよし監督が、前作「恋恋豆花」に続いてモトーラ世理奈を主演に起用して手がけた短編作品は、コロナ禍の現況ように不安と焦燥溢れる世界で生きることの息苦しさを感じている少女の心の闇を、モノクロの詩的な映像で描くノスタルジックなダークファンタジー。
モトーラ世理奈さんが1人3役を演じているほか、「シルク・ドゥ・ソレイユ」にバイオリニストや音楽監督などで参加するフランス出身の音楽家ポール・ラザーが俳優として映画に初出演し、音楽も担当している。
本編では希少な8ミリフィルムも使用し、アナログフィルムの質感を再現していて独特な世界観を繰り広げている。
36分の上映時間の展開で観客へ何かを提示するのではなく、「音楽」、「映像」、そして朗読劇のような「台詞」により、観客自ら答えを見出ださせるという、或る意味、感性を試されるような作りになっている。
この「映像詩」と言えるショート・フィルムは、ほぼモノクロで、登場する少女の心の闇の深さを表現していると思う。
ただ、今関監督はどんよりとした闇の展開の先に「リボーン」を用意していて、2019年製作だが、その後に起きるコロナ禍の社会を予見していたかのように感じられる。