この映画を劇場で見終わった後、隣にいた熟年夫婦が言った。「まあ、世の中ってこういうもんよね。しょうがないよ」
……確かに、国家を相手取って戦う時、一人の人間の無力さを考えれば、その意見は決して間違ってはいない。しかし、であるが故に、この映画を観た後の胸くそ悪さというものの根底には、そんな日本社会全体に蔓延している諦めの精神があるのだろうと感じる。アベンジャーズやバットマンのように倒すべき相手が明確になっているわけでもないため、どうすることも出来ない社会への漠然としたもどかしさ。どのホラーよりも救いようもなく恐ろしい、そう思えた良作。
