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我輩はカモであるのSIのレビュー・感想・評価

我輩はカモである(1933年製作の映画)
5.0
2022.11.3
れんが屋にて鑑賞

大富豪夫人の独断により首相に選ばれた男は、敵国からの間抜けなスパイとともに内政をかき乱しついに戦争へ。死にかけるも土壇場で勝利。反戦主義だったのに途端に喜ぶ夫人にモノを投げつける。

傑作。マルクス4兄弟。
前半はあまりにナンセンスの極みなため、笑いには間が大事なのだと考えたりもしたが、次第に狂気が削がれ笑いの質が上がっていく。

レモネード屋を二人でいじめるアクション芝居。ジャケットのボタンを外すと身体から犬が出てくる。サイドカーが毎回分離して置いていかれるのもいい。
ドアを開けた隙に忍び込もうとしてまた締め出される下り。音楽プレーヤーをいくらぶっこわしても止まらない。鉄板。鏡越しのふりをしていたら3人目が来てしまう。
戦争をコメディに落とし込むセンスの良さ。撃たれて帽子が回る。お尻を撃たれたり味方を撃ったり。悲劇は引いてみると喜劇。なるほど。前半のナンセンスの連続はこのヒキの視点の確保にあったのか。

ラスト、反戦主義のはずだった夫人が途端に戦争勝利を喜び、主人公らがモノを投げつける描写が最大に風刺が利いている。
夫人が最初から戦争を狙って主人公を任命していたとしたら…。恐ろしい幕切れに、ゾッとした。

口がきけない役をやっていたハーポの狂気が光る。純粋な悪意。キャラ立ち抜群。

笑いについて、考えさせる。マルクス兄弟の他の作品も気になります。
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