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黒い雨に打たれてのdaiyuukiのレビュー・感想・評価

黒い雨に打たれて(1984年製作の映画)
4.6
『はだしのゲン』の原作者・中沢啓治が企画・原作・製作した反核テーマの劇場アニメ。
 1945年8月6日。広島に投下された原子爆弾は、爆発後も放射能を含んだ黒い雨を降らし続けた。その影響は、被爆した人の子供、そのまた子供へと、人々の体に浸透する。そして終戦から数十年、今なお原爆の後遺症に苦しむ人は無数にいた。肉親を亡くしたバー赤馬のマスター武司、梅毒を米兵にうつしてアメリカへの復讐を図る百合、市会議員たちにケロイドを見せてヒロシマの生き証人になろうとする友子、被爆者二世ゆえに出産に戸惑う英子。彼女たち一人一人がそれぞれ切実に戦後を生きていた。
 私財をなげうってでもこのアニメで被爆体験を伝えたかった、という自らも被爆者である原作者・中沢の意志が全編にみなぎる劇場作品。主要登場人物の一人・滝村のCVを、西城秀樹が演じたことも話題になった。監督は、東映動画(現・東映アニメーション)作品などで活躍のアニメーター兼演出家・白土武。
「はだしのゲン」の中沢啓治が、「はだしのゲン」以前に原爆犠牲者の群像劇を描いた作品のアニメ化。
放射能により皮膚が焼け爛れ、ガンなどになりやすい身体を背負い、被爆者二世など子孫も原爆病になりやすい体質が遺伝し、結婚相手から「子供は作らないでくれ」と言われ、「放射能が感染る」と根拠のない差別され、原爆や原爆投下したアメリカに対して癒えぬ怒りを抱えて生きる被爆者の群像劇を通して、原爆が与えた根深い苦しみや悲惨さがより生々しく伝わってくるヒューマンアニメ映画。
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