シャチ状球体

グレイハウンドのシャチ状球体のレビュー・感想・評価

グレイハウンド(2020年製作の映画)
3.8
第二次世界大戦中、英国までの輸送船団の一艦長であるトム・ハンクスが航空支援の無い中でドイツ軍のUボート部隊の猛攻を切り抜ける映画。

敵が潜水艦なのでレーダーに映っても姿が見えないところがスリリング。更に、魚雷を当てようにも自艦と敵艦の向きが正確でなければならないので艦長の指示が乗員全員の生死を分けてしまうのだ。
陸や空と違って個人戦が発生しないためにチームの連携が重要になってくるのが映画向きかも。

敵艦撃沈後の海上が真っ赤になるなど、戦っている相手は見えないながらも確実に人間と人間が殺し合いをしているという生々しさと命の重さを感じられるような演出も静的な恐怖を醸し出してくれる。

味方の航空支援が来るまでの数日間の話ということもあり、画面は常に戦闘状態か緊張状態で息つく暇がない。
もう少しオープニングの平和なシーンが長ければ緩急がついたとは思うけど、これはこれである程度ドラマ性を犠牲にして上映時間を短くしたことでかなりの緊迫感を出せている。登場人物の描き分けが充分ではなく、緊張からの解放によってカタルシスを生み出せていないところは微妙。

全体的に薄味だけど、逃げ場のない海という舞台設定は上手く生かせていたのであまり後に残らない戦争映画が好きなら普通に楽しめるはず……。

最後に、DVDやBlu-rayでしか観られない映画があるかと思えば特定の配信サービスでしか観られない映画もあり、今後の映画業界はどのように収束していくのだろう、とふと思ったり……。
シャチ状球体

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