QTaka

君から目が離せない ~Eyes On You~のQTakaのレビュー・感想・評価

2.0
舞台俳優秋沢健太朗映画初出演にして主役に抜擢。はたしてその成果は?
ん〜、ん〜、ん〜…
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前作「月キャベ」でも、主役を演じた山崎まさよしは初主演にして主役だった。
あの名作はなぜ生まれたのか。
本作を見るにあたり、「月キャベ」を見てみた。
確かに、山崎まさよしは、最高のミュージシャンであって、ベテランの役者ではなかった。
冒頭の演技から、ぎこちなさは一目瞭然だった。
一方のヒロイン役真田真垂美も、若さが弾ける少女だった。
二人ともそれぞれでは、スクリーンに観客を釘付けにするような”役者”ではなかった。
でも、そんな二人の演じた「月キャベ」は、観客を魅了し、多くの人の心にしっかりと刻み込まれた。
そこで何があったのだろう。
それこそが、”化学変化”と呼ばれる奇跡なんだろうと思う。
みんなの心に染み込んで離れなくなった名曲”One more time, On more chance.”
ミュージシャンの山崎まさよしの魅力と力が最大限に発揮された。
同時に、俳優としては、山崎よりも経験もあったであろう真田真垂美のダンスが曲に呼応したときに、何かが起こった。
この二人の若い(しかし、格別な)力が共鳴したときに、観客はこの映画に魅了されたのだと思う。
映画において、俳優としての経験値は、時として重要ではないのかもしれない。
むしろ、そこで作られる場面において、如何に”化学変化”するかが重要なのかもしれない。
そういう意味で、前作はすごかったのだと思う。
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さて、今作「君から目が離せない〜Eyes On You〜」。
前作同様に、映画初出演にして主役の若手俳優だ。
今度は、映画とは全くの畑違いでもない舞台俳優で、しかも売れっ子だ。
つまり、舞台での演技の実力は折り紙付き。
そして、本作は、「月キャベ」の監督・スタッフが勢揃いと聞く。
さらに、ヒロインは真田真垂美さんは「月キャベ」と同じ。
こう聞くと、期待は膨らむばかりだ。
今度は、どんな映画になって、感動させてくれたのだろう。
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一言で言うなら、「化学変化」は起こらなかった。
映画は、良かったと思う。
それぞれの配役もストーリーをきっちり見せてくれた。
だから、おかしなことも、悪いところもなかったんだと思う。
上映後のトークショーで、監督が少し設定が飛躍する部分がいくつかあったとおっしゃられたが、それは映画のストーリーとして躓くところでもないように思った。
だから、物語はよくできていて、よかったんだと思う。
ただ、胸をギュッと締め付けるような、あるいは脳天をガツんっとやられるような衝撃はなかった。
いつまでも耳の奥でリフレインされるようなセリフも無かった。
前作と、シチュエーションはそう変わらないのだけれども…
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ヒロイン真田真垂美さんについて
前作では女の子だったのに、本作では立派な魅力的な女性になっていた。
それだけの時を経ていると言うことだけれども。
スクリーンに最初に登場する姿は、スーっと現れて、サッと振り向く姿が圧倒的にイイ。
時折、その背中や後ろ姿の肩のあたりに、抱えている辛い思いを表すところなど、絶妙だった。
変わっていく、青年との関係をその表情で受け止める姿もイイ。
こうしてみると、演技とは、セリフをなぞることなんかじゃないんだなぁと知らされる。
こう言うのを巧さというのだろう。
かつての「月キャベ」の少女とは違うのだ。
ここに映っていたのは、まさしくベテラン女優だった。
ただ、「月キャベ」の後、しばらくして女優業から離れていた真田さんが、こうして復帰して、スクリーンで見られたことには感謝しかない。
(前作「心に吹く風」も見てみたい)
そうしてみると、この映画で化学変化が起こらなかったことが残念でならない。
「誰が」ではなく、結果として「化ける」ことはなかった。
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真田真垂美さんのヨガが美し〜。
実際、インストラクターをされているらしいので、これは正に本物だ。
そのシルエットの美しさは、何者にも代えがたい映像だった。
あるいは、その姿が表す感情の強さを魅せて欲しかった。
もっとその表現をうまく利用して魅力を引き出して欲しかった。
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物語のエンディング
その「何年後」っていうの必要なのかな?
役者として成功を目指す青年の物語だから、彼がその後どうなったのかが必要なのか。
でも、途中から純粋な恋愛物語になっていったと思うんだけどね。
その恋の難しさを経験するところで、十分だったと思うんだけどね。
その経験を経て、再び舞台に立つだけで、十分だったとおもけどな。7
だから、その「何年後」のラストシーンで、かなり覚めちゃいました。
物語としては、そういうエンディングなのでしょうけど。
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名作が生まれる時ってどんな時なんだろうな。
監督もスタッフも、そしてヒロインも同じなのにな。
残念。
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