深夜テンションで茶々を入れながら観ていたのに、だんだん引き込まれて無口になって、最後には滝のように泣いていた。
制作に15年もかかったという、コマ撮り長編映画の本作。人間の役者のような不完全さを演出するため、わざと脚本上不要な動きをさせたシーンもあるという。
これは……、想像していたよりずっと胸に刺さる。
脈も体温もないけれど、ピノッキオは確かにゼペットの息子だった。与えられた分の愛情を全身全霊で返し、知識はどんどん吸収・実践し、精神的に成長していた。誰よりも愛情深くて無垢だった。生まれてすぐは奔放が過ぎてかなりヤキモキさせられたけど、話が進むにつれて彼を大好きになれた。
かなり社会派な一面もあり、カルロの死や中盤の訓練シークエンス、大量の機雷が浮かぶ海など、現実に引き戻されるような無情な場面が多かった。ファンタジー作品でこういった描写が出てくると、途端に萎えてしまうのが私の悪癖なのだが、この映画ではそういったことはなかったな。私にハマる描き方だったのかもしれない。
笑いあり涙ありの冒険活劇……で終わるのではなく、終わりがあるから愛おしく、いつか死ぬから「命」なのだとそっと教えてくれるラストの幕引きは、もうさすがというか、本当に裏切らないなあ!あのラストシーンのおかげで、ピノッキオは間違いなくゼペットの息子であり、幸せのうちに生涯を終えたのだろうと確信できた。じっくり余韻に浸ることができる、見事なストーリー。
一切のごまかしや妥協のない、映画史に残すべき作品だと思う。舐めていてごめんなさい。
ぜひ制作ドキュメンタリーも見てほしい。BGMには木製の楽器のみを使ったと知り、私はより一層この映画が愛おしくなった。