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ギレルモ・デル・トロのピノッキオのYAEPINのレビュー・感想・評価

4.0
ストップモーションアニメってこんな進化しているのか…
この滑らかな動きを作るために一体何枚ものカットが重ねられているのか、考えるだけで気が遠くなる。
風になびく髪の毛まで細すぎるくらい表現されている。

…と思っていたら、本作は時間と製作費がかかりすぎて10年ほど前に一度中止になり、2018年にNetflixが製作権を取ってようやく再開されたという。実際に長年の苦節の末に完成した作品だった。
当然のごとく2Dアニメでの製作を提案されるも、デル・トロ監督はそれを許さず、あくまでストップモーションに拘ったそうだ。

監督はディズニーの『ピノキオ』を敬愛しているそうだが、本作はそれとはかけ離れており、ファシスト政権下のイタリアが舞台になっているなど、かなりダークで風刺的な設定が重ねられている。

ゼペットは子供を失った悲しみで飲んだくれのやさぐれ爺さんになっているし、ピノキオへの気味悪がられ方も半端ではない。
ピノキオは生物としての死が訪れないことから、大道芸人としてだけではなく、兵士としても駆り出されそうになる。

ただピノキオもなかなかの破天荒ぶりで、大人の言うことは全然聞こうとしない。ゼペット含め大人たちは、ピノキオを従順な「いい子」になるよう押さえつけようとするが、簡単には従おうとしない。
見てると段々イライラしてくるレベルなのだが、本作のテーマこそその部分で、人は誰の代わりにもなれず、自分の意思と自由に基づいて行動できることが何より美しい、というメッセージとなっていた。

ラストはディズニーCG版と同じ帰結を辿るのだが、作中丁寧に繰り返されてきたピノキオの反発と自由意志をゼペットが尊重する形で、きれいにまとまっていた。

さすがギレルモ・デル・トロの求心力か、右を向いても左を向いてもキャストが豪華だった。
まさかケイト・ブランシェットが猿を演じるとは思ってもみなかった。
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