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ギレルモ・デル・トロのピノッキオのArkのレビュー・感想・評価

4.7
2023-280
1930年代のイタリア。第一次世界大戦で一人息子カルロを亡くしたゼペットは長い間深い悲しみに沈み、恋しいあまり木で人形を作ると、森の精霊が人形に命を吹き込む。無邪気なピノッキオはおじいさんのために頑張るうちに成長していく。


「起きることが起き、
 私たちはこの世を去るのだ」
出会いと別れ。たくさんの思い出たち。
人生は儚い。命ある限り死もそこにある。1日1日を大切に生きようと思える作品だった。

冒険に出たピノッキオ。きっと大丈夫だろう。大切な仲間と過ごした日々が心の中にあるから、彼は独りじゃない。

観終わった後、子どもの頃を思い出すようななんだか懐かしい気持ちになる。子どもの頃から今まで色んなことがあったな、いつの間にかこんなところまで来てしまったな……と。

「わしはお前を変えようとした
 だが、カルロや他の誰でもなく
 お前はお前でいてくれ
 お前を愛してる
 ありのままのお前を」

今年最後の映画として相応しい作品だった。



イタリアの作家カルロ・コッローディが、児童小説ながらも当時のイタリアの社会・政治風刺を込めた「ピノッキオの冒険」が原作。
18世紀のイタリア統一運動の成果として1861年にイタリア王国が建国されたが、第一次世界大戦まで統合が難航した「未回収のイタリア」、国外から流入してきた産業文明による国内産業の急速な変化など、コッローディは当時のイタリアを「人々が力に従わされ、縛られる地」として見つめていた。 ピノッキオが周囲の人々の言うことを聞かないのも、彼を通じて「子どもらしい子ども」を描くと同時に「従わされることも縛られることも拒む自由な人間の姿」を描いたからだそう。それらの意図は本作にも反映されている。

クリケットが青色なのは、ピノッキオに死を教える存在だからだとか。確かに、ピノッキオに命を吹き込んだ精霊もガイコツうさぎも青だった。

デル・トロ監督は人形の表情に拘って製作したらしい。ピノッキオの表情は何千もの“お面”をコマごとに付け替えることで実現。このお面の製作には3Dプリンターが活用されている。
製作に15年を費やし、途中で2Dアニメーションに変更する妥協案もあったそうだがNetflixの資金援助により完成まで漕ぎ着けたらしい。

ストップモーションとは思えないくらい滑らかなアニメーションに仕上がっていて感動する。
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