yksijoki

行き止まりの世界に生まれてのyksijokiのレビュー・感想・評価

4.2
前半は、スケボー店の描写も撮っている映像も含めリアルmid90sじゃん!とか思ってたけどこちらのほうがよりリアルで、物悲しくて、当人たちが感じているやり場のない思いとかロックフォードという土地に対する悲壮感みたいなものが表現されていてなんとも現実を見たなと言う感じになった。ここから抜け出さないとだめだとそれぞれが感じているし、自分自身の人生を考えていくそれぞれが非常に魅力的に映っていて素晴らしかった。

スケボーへの愛と依存も非常に良かった。店主が「スケボーはただのスタイルだったり友達を作ったりするツールではない。これがあれば抜け出せるんだ」と言っていたのも印象的だし、ザックが「スケボーはコントロール(制御)。そうしないとイカした世界でまともで居られなくなる」と言ってたのもとても心に残った。

育ってきた環境や家族によってそれぞれの価値観が形成されていて、反面教師にしたり、見習ったりしながら自分の人生を考えていくその過程をインタビューで同じ立場のビンが尋ねていくことで正直で偽らない、見せかけでない本当の自分をそれぞれが表現していると思った。そこに気づいていく様がとてもグッときた。自分の人生をクソな方向に進めちゃうのは自分が最低だからと言うことを認めたくないんだみたいなことをザックが最後に言っていたのもなんかそこまでのザックをみんなで見てきていたからこそリアルだなと思ったり。

当事者たちが置かれてる環境を理解しながらも少しでもベターな方向に物事を捉えようとしているところがとても好感がもてるというかある種の反骨精神みたいなそういうサヴァイヴしていくための心持ちみたいなものが根付いているようにも思った。失敗してコケたら痛いしそれを繰り返して技を身に着けていくまさにスケボーの精神と同じだなと。

映像がすごく良くて、スケボーのシーンもめちゃくちゃ格好良いしフィクションじゃないの?と思うぐらいにインタビューシーンも日々のドキュメンタリーのシーンもリアリティがすごくて彼らの日常を本当に横で見ているような感覚になった。あとはビンがちょっと躊躇しながら聞く質問やアドバイスがとても正直でこの関係値じゃないと聞けないことだし突っ込んだことも聞いていてすごいなと思った。自分の母親や自分自身にも正直だしちゃんと考えていて素晴らしかった。

ビンが継父から受けていた暴力がテーマにはなっていて、キアの育ってきた環境と、ザックが婚約者のニナに対して暴力を振るうこととの重なりが非常に心をギュッと締め付けられた。同じ傷を追っているキアに対して自分を重ねていたからこの映画を撮っていると打ち明けるシーンとそれを聞いたキアの笑顔が印象的だった。

キアが父の日に父親の墓石を探しに行くが、場所を思い出せなくて苦悶するシーンと、その後やっとの思いで場所を見つけて、墓石の前で座り込んで涙するシーンが素晴らしいシーンだと思った。多くを語ってないけどビンだからこそ撮れる映像だと思ったし語っていないからこそのメッセージ性がそこにあったと思う。
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