レッドキング

彼女の権利、彼らの決断のレッドキングのレビュー・感想・評価

彼女の権利、彼らの決断(2018年製作の映画)
3.8
アメリカにおける人工妊娠中絶をめぐるドキュメンタリー。
中絶を巡っての歴史から現在までの趨勢、政治や宗教との問題を浮き彫りにする。

日本と決定的に違うのはやはり「宗教」が絡むという点。
「中絶は神の意志に背く」という認識が根強く、特に保守的な田舎の地方では中絶手術を行うクリニックを爆破したり、手術を行う医師が銃殺されるなどの過激なケースまである。
そして、こういった保守派の支持を得ることで政権を狙う候補者が中絶廃止に関する法案を通そうと政治までもが絡むという複雑な事情があるようです。

冒頭から何度も語られるように「女性と医師との間で決定されるべきことで、政府が介入する話ではない」「中絶禁止より先に、望まぬ妊娠を発生させないのが先」という至極まっとうな主張がなされている。
女性が自らの人生を選択することになぜ政府が口を挟むのか。
経済的な理由やキャリアの問題、胎児の障害など理由はやむを得ないものであるにも関わらず、「胎児の殺害」の一言で反対派は片付けようとする。
産めとは言うが、その後のことには何も言及されていないのではないか。

中絶禁止法案を否決するために、テキサス州の女性議員はスニーカーで演台に立ち、投票時間が締め切られる13時間の間カテーテルを挿入しながら演説を続けた。
これに多くの女性や支援者が駆けつけ、議事堂の中も外も女性の権利を求める声で溢れ返ったシーンには希望が見えました。
当事者たちが自らの選択で自分の人生を決めているだけなのに、保守派のおじさん達が政治など関係ないところで規制しようとしている
まさにタイトル通り「彼女の選択、彼らの決断」という状況です。

女性で初めて最高裁判事となったルースベイダー・ギンズバーグは『ビリーブ』や伝記映画の『RGB』などの映像作品でも知っていましたが、本作でより彼女の功績が分かりました。
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