映画好きの柴犬

スウィング・キッズの映画好きの柴犬のレビュー・感想・評価

スウィング・キッズ(2018年製作の映画)
4.4
ファッ○ン、イデオロギー!

 「サニー 永遠の仲間たち」のカン・ヒョンチョル監督の傑作ダンス映画であり反戦映画。タイトルやアートワークを見ると、ポップな青春ダンス映画のような印象を受けるし、それは間違いではないが、それだけには止まらない素晴らしい作品。「パラサイト」に負けず劣らず、今年2本目の必見傑作韓流映画。

 前半は、黒人米兵、北朝鮮捕虜、間違えて捕らえられた韓国人、中国兵捕虜、家族を養うため通訳になった韓国女性といった、人種・国籍・思想の異なるはぐれモノたちが、ダンスを通じて心を通わしていくコメディタッチのダンスムービー。とにかく、ダンスシーンがキレとノリが最高で、思わず体を動かしてしまうほど。あえて時代考証を無視して場面に合わせた音楽を選び、テンポのいいカット割も秀逸。そして、元々著名なダンサーであるジャレッド・グライムスや、人気アーティストであるD.O.のダンスも圧巻。

 そして後半、これが戦時中だったということを思い出させる不穏な事件が続く中、クライマックスのクリスマス公演に全てが収斂していく演出が見事。そして最高潮のステージの後、迎える結末は予想を遥かに超える余韻を残す。

 紅一点のヤン・パンネを演じた新人パク・ヘスの凛とした存在感と、小さな体を躍動させるダンスが印象に残った。「サイコだけど大丈夫」の自閉症の兄役が印象深いオ・ジョンセが、ここでもいい味を出してる。