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マルモイ ことばあつめのおもちのレビュー・感想・評価

マルモイ ことばあつめ(2018年製作の映画)
4.1
 朝鮮語学会事件を基にした物語。ユ・ヘジン主演。
 日本統治下にあった朝鮮半島、ハングルを捨てて日本語を使えという強い圧力を受けながら、朝鮮語の辞典を作ろうと密かに奮起する人たち。主人公は文字の読み書きが出来ない素行も悪いダメ男だけど、ある日に辞典を作ろうとする学会のリーダーのカバンを盗もうとした事件を機に数奇な縁からその学会の雑用として雇われ、文字を知らないながらも辞書の編纂に助力していくというストーリー。
 作品としては「タクシー運転手」の脚本を手掛けた監督なので進行は文句ナシ。さらにヘジンがハマリ役でひとつひとつの演技が素晴らしい。母国語とはいえ大人になってから文字を覚えるなんてとてもじゃないけど大変、少しずつ覚えていき町中に書かれている文字を嬉しそうに指さして読んでいく姿や、子供向けらしい本を読んで涙する姿がグッドだった。「1人の10歩より、10人の1歩が大切」という台詞が出てくるんだけど、その言葉通りに刑務所仲間の各地の方言話者たちを連れてきて、ひとつひとつ単語を見せては順番に方言を言って記録し...という途方も無い作業なんかも良かった。標準語を決めるのってなかなかに骨の折れる仕事なんだな。
 そんな秘密裏に製作を行っていた最中やはり日本に見つかってしまうけど、警察総動員の中なんとか原稿を守り抜こうと団結する皆の姿勢は凄いの一言。ただの雑用係だったのにいつの間にか中心人物になっちゃってる主人公だけど、これは彼の持つ人徳なのかなって感じ。機転も効くし本来はかなり頭が良さそう。戦後、亡くなった主人公がたどたどしい字で書いた手紙を子供が読むシーンはぐっときた。
 最後に実物の原稿も出てきた上でちゃんと史実が基のフィクションですと配慮(?)してたので反日に抵抗ある人も安心して観られると思う。2時間オーバーを感じさせないかなり満足度の高い作品だった。オススメッ!
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