おなべ

マルモイ ことばあつめのおなべのレビュー・感想・評価

マルモイ ことばあつめ(2018年製作の映画)
3.7
◉「一人の十歩より、十人の一歩」

◉1940年代、日本統治時代の朝鮮・京城。日本軍の支配・弾圧が進み、学校では日本語を常用的に話すよう矯正されつつあった。そんな中、朝鮮語学会の代表や仲間たちは、祖国の言葉が失われないよう各地の方言を集めて辞書の編纂を試みる…。

◉実話を基にした物語。“言葉”を命懸けで守り抜いた、名もなき歴史上の人々に焦点を当てた作品。詳細は「朝鮮語学会事件」で検索。

◉主演を演じるのは、一度見たら忘れる事のない顔の持ち主《ユ・ヘジン》(パンス役)と、安定感のある《ユン・ゲサン》(リュ代表役)。

◉いかにも韓国映画らしい。序盤はユーモアを交えつつ、中盤から終盤にかけてはしっかりシリアスで締める。このメリハリには毎度驚かされる。扇状的な演出で感情移入を誘うのも巧い。役者の演技が巧いからかもしれない。

◉パンスは日本でいう寅さんみたいな人柄で、ガサツだけど人情深い。一方のリュ代表は、人格はあるが少しお堅い。ウマの合わないはずの2人が、喜びや喪失を共にしながら次第に打ち解けていく関係性の変化が見どころ。

◉日本の学校では教わらない辛く凄惨な事件。日本人が悪いとかじゃなくて、理不尽に地域に根付いた言語や文化を排斥するのは、される側からすると母国や故郷を失うのと同じような言い知れぬ悲壮感が漂う。海外に行った事がある人は分かると思うけど、言葉は精神的つながり。朝鮮語を命懸けで守り抜いた人々に想いを馳せ、今後もこのような理不尽な悲劇が繰り返す事のないよう願うばかり。
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