ナカムラ

天気の子のナカムラのレビュー・感想・評価

天気の子(2019年製作の映画)
4.0
我々はこの物語をとっくに知っている。

アンダーグラウンドで、1990年代から脱がされたり、犯されたり、殺されたりしながら、消えたり、天に還ったり、前世を思い出したり、そういう陽菜さんを我々は10000回は見てきた筈だ。

これはかつてのエロゲーで幾度となくすり潰されるように消費されてきた物語じゃないか。
チンポを扱きながら涙も流したいという、我々の歪な願いに応答し続けた、物語だったものの成れの果てを、いつの間にかエロゲーなんかしなくなって、恋愛をして、結婚をして、人の親になって、一人前の大人になったつもりで、すましヅラをしているところに、かつての友だちがやって来たんだ。久しぶり、元気にしてた?って。

久しぶりだったなぁ、……ごめんなって僕はそれに答える。もうチンポは愛する人がちゃんとしごいてくれるし、あの日のパソコンのハードディスクは壊れてしまったし、何より、あの時君と僕だけだったセカイには、新しくて愛しい登場人物がいるんだ。不安をかき消すように二人でわけもわからず暗くて狭くて寒いところで大丈夫と言い合っていた時は過ぎて、三人でちゃんと不安に立ち向かえるところに僕たちは立つことができたんだ。
君たちのおかげで。

さよなら、さよなら。
僕が泣きながら手を振っていると、あいつは何度もこちらを振り返りながらも、いつの間にか小さくなりながら消えた。
けっして、悪いヤツじゃなかった。

この作品は過去の遺物を全年齢向けにチューニングしたにすぎないものですが、僕にはとても、嫌いになることはできません。