Ginny

天気の子のGinnyのレビュー・感想・評価

天気の子(2019年製作の映画)
1.0
天気の子や新海誠監督が好きな人はこの感想を読まない方がいいと思います。


美術 ★★★★★
アニメーション ★★★★★
脚本 ☆☆☆☆☆

美術とアニメーションがめちゃめちゃめちゃめちゃ良いのに脚本がもう信じられないくらい気持ち悪くて怒りを感じながら見てて結末の杜撰さにあっけにとられてポカン状態です。

まず、主人公の帆高が理解できません。
嫌いです。絶対関わりたくないです。
拳銃を打つのも信じられません。島から家出してきた理由も行動力も周りへの感謝がないところも大嫌いです。人物設計が見えません背景が見えません。

自分自分と、それしか考えられない頭で、後先考えずに行動する様子は嫌いな映画『シングストリート』にも通じるものがありました。
自意識肥大化し過ぎじゃないでしょうか。

2019年にこれを見ていたらまた違った感想があったかもしれませんが、2021年の今見ると、これを今やっちゃう?(冷めた目線、呆れ)と感じてしまいますね。

主人公の子供vs理解してくれない社会・大人の構図。
「分断」するな。

フェリーに乗れて島から出てこれたのも、ネカフェとまれたのも、その食べてるカップラーメンも、見えない大人たちが支えてできてるものなんだぞ。なんでお前1人が苦しんで耐えて世界の理に気付いて周りはなにも分かってくれないと思ってるんだ。
愛にできることはまだあるかいって、愛しかできねーんだよ。愛があるから一人一人役割に従って仕事して支え合って社会作ってるんだよ。
まず1人への愛が、翻ってその人が生きる社会全体に向かうんだ。人を愛することは、その人だけに限らず取り巻くこともこれからのことも未来に向けても全て全力前進で尽くすことだと思う。

社会のこと何も知らない世間知らずな主人公をのさばらせ過ぎ。
影響力のある映画でこんな内容を発信してしまうところに新海誠監督の無責任さというか、自分が良ければOK感があるというか。

世間に作品を送り出すことに対する考えというか哲学というか、そういったものが感じられません。引きます。ドン引きしました。

無理矢理の二者択一。
愛を人質にとってやりたい放題の無責任ストーリー。
だってこれを非難したら、「じゃあひなちゃんがいなくなってもいいの?」とかヒステリー馬鹿に言われそう。

子供が大人を頼れない描写がつらい。
中途半端に優しそうな大人は出すけど肝心なところでは大人は敵の構図を持ち出してくる。
気色悪っ
リアルの世界で頑張って子供達のために働いている大人はいます。実際多くの人がそうです。無言で頑張ってます。ニュースで扱われる一部に酷い印象がついているだけだと思います。
なのに警察も児童相談所も悪のような扱い。
いや、元凶は家出して拳銃使ったお前だろ。

で、ひなと凪の保護はどうなったんですか。
児童相談所の児童が18歳になると施設から出なくてはならず働くのも家を借りるのも大変なこと、帆高は大学進学(親のお金ですよね?)でどつやってこれから支えていくんでしょうか。

愛愛愛愛愛だけ言ってればいいんじゃないですよ。
もっと真剣に向き合って欲しかったな。
天気に。
とってつけたような超能力だけもってきてこの話は残念です。

あと、RADWINPSの音楽は野田さんの優生思想ツイート見てから受け入れ難くなりました。

プペルで興味深い批評だったのが、
プペルの映画は日本アニメスタジオの中でも素晴らしいstudio4℃が製作していてアニメのクオリティが高いからその点で評価できるのに、全ての感想の意識が西野に向いてしまい西野の評価みたいになってしまう。西野の巧妙さというかずる賢さというか。

『天気の子』も取り扱いが難しいなと感じました。
ほんっとにほんとに美術もアニメーションもめちゃめちゃ良かったんです。東京の景色、雨の描写。目が奪われる素晴らしいものでした。
でも私は新海誠監督の脚本が受け入れられなかった。
世の中で聞く感想で「良かったよ」ってなったら、もう新海誠監督の名前は有名なので、新海誠監督の評価に安易に繋がりそう。
作品の評価ってそんなテキトーでいいの?
もっとみんな真剣に見ようよ!!!!!

「映画の目的は政治に意見を言うことだ」と印象に残ってる言葉があります。
『ハリウッド映画の一世紀』というドキュメンタリーで見たもので、ある監督の発言か映画学の教授の言葉か、メモが曖昧でわからないのですが私はこの言葉に深く賛同します。
映画が世に送り出される時、単なる目眩しのお遊びではなく、今の現実を生きる私たちに届くもの、受け取った私たちが考え行動できるものでありたいと思っています。

映画も漫画も本もエンタメが現実逃避の場所になりたくありません。
私は一見周りから現実逃避しがちと思われてそうですが、違います。現実で生き抜くために、英気を養ってるんです。
現実問題から目を逸らさない、社会に対して責任を負い、義務を果たす。

世界の様々な問題に心から怒っていた有名なアニメ監督の映画は、何度見てもいつ見ても含蓄があるからか色褪せず引き込まれます。
問題意識があることで、伝えたくて仕方のないことがあり、クリエイトに繋がるのではないでしょうか。

少し耳にした程度で、実際はどうかわかりませんが、最近の美大の卒制は技術は優れていても中身が薄く似通ったものが多いという批判を見ました。今自分たちが生きている社会に対しての視線が抜け落ちているのでは、と。
批判意識も問題意識も大事だと思います。

で、この映画は何があったのでしょうか?
大勢のこの国に生きて、社会を支えている人たちを無視した、自己満足の閉じた関係を見せられただけな気がします。

世界って、社会ってそうじゃないでしょ。
愛って1人だけに向くものじゃないんだよ。

もう少し世間を知って、社会に対する責任をとってほしいなと思います。
この閉じた世界を良しとして広めないでほしい。
Ginny

Ginny