RyoS

天気の子のRyoSのレビュー・感想・評価

天気の子(2019年製作の映画)
3.3
途中で寝落ちしても話についていける親切なナレーション、寝落ちせずちゃんと観てる人には興ざめ。

良い部分とダメな部分がこれほどはっきりしている映画はなかなかない。

ダメな部分。警察との茶番が茶番過ぎる。「いやそうはならないだろ」という展開過ぎて突っ込まずにはいられない。ストーリー後半のチェイスシーンは、主人公と仲良くしてくれた人が行く先々で助けては別れていくという1,000回は見たような鉄板の展開。観客の内から湧き上がってくる感情を上塗りしてぶち壊すナレーションは昔の悪い癖のまま。前提が晴れの日を楽しみ雨の日を憂うようなマジョリティのための映画。晴れが良いという価値観の押しつけがましさすら感じられる。総じてセリフと音楽が多く、引き算の演出が皆無。+5だったものを+100にして感動させてくるタイプ。

良い部分。圧倒的映像美を前にすると展開の雑さとかどうでも良くなってくる。ジブリもびっくりの水の描写。バニラの宣伝車や山手線の通知音など、山手線内側の空間の造形が細かでリアル。映像美も相まって、"みんなの知っている"東京を舞台に面白いことが起こる、というリアルな空間を巻き込んだ劇場型エンタメになっている。東京都心部を知り、親や地元に何らかの不満を持っている若者に幅広く共感してもらえるために、主人公の住んでた島の描写は極端に少なくしたのかもしれない。また、天気を扱う上での花火や巫女など伝統文化の入れ方もうまい。そういう文化的な要素があるだけで段違いに深くなる。そして素直じゃないハッピーエンディングも余韻に浸れて良かった。

個人的にはこれを新宿で観れたことが一番吉だった。
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