かわさき

天気の子のかわさきのレビュー・感想・評価

天気の子(2019年製作の映画)
4.3
腐った世の中にひとことモノ申したい。「キャッチャー・イン・ザ・ライ」の主人公、ホールデンが心の友だった我々は、常に腹に一物持って生きてきた。そこに行動力が伴っていれば立派な人間然として見えそうなものだが、そうでない場合は自身の暗黒面を育てるだけかもしれない。例えば私なんかは、Twitterにはびこる悪意と対峙するだけで心が折れる。マジでネットの使用は免許制になれば良いのにね? けれども、絶望するだけで何もできない現実がある。世の中がクソでも、香港の若者のようにデモを起こすこともなければ、#Blacklivesmatterの時のようなアフリカン・アメリカンにもなれない。私のような人間に出来ることと言えば、精々選挙に行くことぐらいだ。

 私と同世代(決裁権の有無も関係している気がするので、世代の話ではないのかもしれない)に、結構この手のタイプが多い実感がある。「そんなことはない!」という方もいらっしゃるだろうが、そんなあなたは本当に立派な人だ(揶揄ではない)。もう私は肉体も感性も貧しくなってしまったよ。

 …という人間に、この映画はぶっ刺さりまくったのではないか。帆高の子供じみた独り相撲にイライラして、同時に須賀の「大人になれよ、少年」という台詞にもモヤっとする。“一体自分の核心はどこにあるの?”という気持ちになるのだが、その宙ぶらりんな心象こそが、まさしく“現在地”であるような気がしてならない。だからこそラストシーンには心揺さぶられ、その結論に甘えてしまいそうになるのだ。「ご都合主義」と罵るならば勝手に罵ってくれ。この世界がクソなのは俺のせいじゃないし、ましてやお前のせいでもないんだよ。
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