ししまる

2分の1の魔法のししまるのネタバレレビュー・内容・結末

2分の1の魔法(2020年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

良かった!!!
派手なところはないんだけど、ストーリーとかキャラクターの配置の仕方がうまかった。めちゃくちゃ王道中の王道、弱気な男の子が成長するロードムービーなんだけど、締め方がめちゃ良い。
メッセージ性だけならアナ雪より好きだ。

劇場の予告編だかで、タイトルが「魔法」で「氷っぽい」感じで出てきたので、これはもうアナ雪の対だと。姉妹の物語と兄弟の物語だと。期待いっぱいで見に行きました。結果、多分違う…。
魔法が使えるのが弟なところ、「魔法」(含むファンタジーな要素)が「本来の自分」であり、「魔法のない世界」と対立軸じゃないところはちょっとそれっぽいんだけど。
アナ雪は明らかに王国と森の民族が対立軸として描かれているのに対し、二分の一は同じ世界なところはちょっと斬新に感じた。魔法は共存するべき他者じゃない、俺が魔法を使うんや!!!という"パワー“がすごい。そうだよなーという気持ちになった。そうだよね。「姉妹としての共存」ですらない。一つ。
全体としては本来の自分(魔法)を取り戻すという感じなので、アナ雪2と同じといえば同じ。

純王道な成長譚なんだけど、恋愛要素が一ミリもないのが良い。つまり、女が成長の糧になってない。目的じゃないしトロフィーにもなってない。最近よくいる強くて有能だけどいざというときは男の主人公に敵わない♡女バディもいない。あくまで父と兄と弟の話。
母は息子を愛してるし、いなくなれば徹夜で探しに行くし、ドラゴンも貫くけど、息子が毛嫌いする新しい恋も否定されないし母の愛が万能でもない。
そんで作中最強の暴力が(明言されてないけど)女!その女と母が友情を育む。サブストーリーとして最高すぎる。
兄と弟の話であって、父と子の話でもあるけど、継承の話ではないんだよね。めちゃめちゃ王道だけど、父の力を受け継ぐとか父みたいになるとかそういうんじゃないとこも良い。王権の継承じゃない。父から与えられるのはほんとにささやかなハグだけっていうのが、いいよね…

いやーーーーほんとラストが良かった。泣いた。なんて丁寧なプロットなんだ。これでいいんだよこれで!途中ちょっと飽きかけたけど!
生き返ったお父さんの声が聞こえないのが良いよね…起きたのはさよならが言えたっていうささやかな奇跡なんだよね…主人公に残されるのはハグだけっていう美しい結末…
個人的には瓦礫の隙間から覗くシーンは映画のメタファーかもとか思った。
映画の中の人生を実際に体験することはできないけど、映画があるからいいんだよ。お兄ちゃんがいるから。
ししまる

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