桃子

決算!忠臣蔵の桃子のレビュー・感想・評価

決算!忠臣蔵(2019年製作の映画)
4.0
前回映画を見に行った時お気に入りのサングラスを落としてきてしまい、それを取りに行くことにした際、ついでだから1本見て帰ろうという理由で選んだ映画。とはいえ久しぶりに時代劇を大画面で見られて、大満足だった。
忠臣蔵は好きな物語で、今までにいくつか見ている。女性からの視点のものだったり、後日談だったり、いろいろなパターンがあったけれど、お金に注目しているのはとても斬新だ。どんな原作なのかと思って検索してみたら、東京大学史料編纂所教授が書いた「忠臣蔵の決算書」という本だった。読んでみたくなる。
大石内蔵助は実にマメで几帳面な人だったようだ。討ち入りにかかった費用をきちんと書き残していたという。それも凄いけれど、その記録が残っていたというのも凄い。
時代劇に出てくる「1両」は今のお金に換算すると12万円とか。播州赤穂から江戸までの片道の旅費が36万円というのに驚いたのだけれど、考えてみたら当時は新幹線も飛行機もない。歩いたら何日かかるんだ、という話である。宿泊費と食費でそれだけかかったんだなあと。
この映画はダブル主演なんだそうだ。大石内蔵助(堤真一)と矢頭長助(岡村隆史)。内蔵助は有名であるが、後者は息子の方が名が通っている。映画では長助は内蔵助を○○して○するのだが、史実は討ち入りの前に病死したため、息子の右衛門七が父の代理を務めたということだ。映画はなんでもアリだから、これもいいのかも。
それにしても、赤穂の武士が関西弁を話す忠臣蔵も初めて見た。かなりの違和感があったのだが、これもコメディ映画だからアリということか。堤真一の内蔵助が何度も「なんでやねん!」と叫ぶのがほんとに笑える。
内蔵助が討ち入りを決心するまでの過程が丁寧に描かれていて興味深かった。なるほど、そういう理由もあったのかもしれない。それと、討ち入りを主君の命日より3か月前倒しにした理由も、資金不足だったからというのが実に理にかなっている。
討ち入りに費やした資金は約七百両だったという。つまり、8400万円。御家取り潰しになっているのだから、収入はない。持っていたお金を使って討ち入るのだから、びた一文無駄にはできない、ということだったのだと思う。
これだけ有名な物語を新しい視点で描いた監督の手腕に脱帽した。最近はオリジナルの映画が少なくて、リメイクとか続編ばかりだから、こういう映画はありがたい。
字幕が必要ない映画。日本人に生まれてよかったなあと思える映画。最高です。
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